2019 Fiscal Year Research-status Report
ダイヤモンド表面へのフェムト秒レーザー照射改質導入によるイオン注入容易化
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19K05033
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岡田 達也 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (20281165)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / フェムト秒レーザー / レーザー照射誘起改質 / ホウ素イオン注入 / 2次イオン質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイヤモンド単結晶表面の9つの領域に,異なる条件でフェムト秒レーザー照射を行った。各照射領域から集束イオンビーム(FIB)マイクロサンプリング法により厚さ100nm程度の薄片試料を切り出し,透過電子顕微鏡で観察して,レーザー照射によるダイヤモンド単結晶の改質状態を調査した。その後,ダイヤモンド単結晶に対してB+イオン注入を行った。 イオン注入したダイヤモンド単結晶の表面側から,2次イオン質量分析(SIMS)装置の1次イオンビームにより掘り進んで,結晶の深さ方向のB+イオン濃度分布を測定した。これによれば,レーザー非照射部においてよりもレーザー照射部においての方が,B+イオン濃度が高いことが分かった。B+イオン濃度の深さ方向分布はレーザー照射条件により大きく異なっており,ダイヤモンド結晶の奥深くまでB+イオンを打ち込むための最適なレーザー照射条件が存在することが明らかになった。 上で用いたSIMSはいわゆる従来型SIMSであり,1次イオンビームの太さが太いため,各レーザー照射部における平均的なB+濃度を測定していることになる。レーザー照射に伴う改質部内でのナノメートルレベルのB+イオン分布を捉えるため,FIBマイクロサンプリング法を応用した別の測定方法を試行した。すなわち,イオン注入したダイヤモンド単結晶のレーザー照射部から厚さ2マイクロメートル程度の薄板状試料を切り出し,Si結晶チップ上に接着した。この試料を,細く絞った1次イオンビームを照射できるナノSIMS装置で観察した。その結果,B+イオンの分布は同じレーザー改質部内で一様ではないことを見出した。 今後,以上の知見をレーザー照射およびイオン注入による結晶のダメージと関連付けて理解するため,試料の局所的な結晶性を評価する分析が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の研究項目として予定していた(1)ダイヤモンド単結晶へのフェムト秒レーザー照射,(2)照射部から作製した薄片試料を用いた断面透過電子顕微鏡観察,(3)レーザー照射したダイヤモンド単結晶へのB+イオン注入,(4)2次イオン質量分析(SIMS)による結晶深さ方向のB+イオン分布測定を行うことができた。またその結果,ダイヤモンド単結晶に深くB+を注入するための最適なレーザー照射条件が存在することを明らかにできた。 上記の成果に加えて,レーザー照射部内におけるナノメートルレベルでのB+イオン分布を明らかにするために,薄板試料を集束イオンビームマイクロサンプリング法により作製し,ナノSIMS装置を用いて照射部の断面SIMS観察を行う手法を確立することができた。 以上により,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ダイヤモンド単結晶にはダメージが誘起されていることが考えられ,このダメージの原因(フェムト秒レーザー照射,B+イオン注入,あるいはそれらの組み合わせ)について明らかにし,ダメージの少ない条件を探索する必要がある。この目的を達成するため,ナノレベルでの結晶性評価が可能な,電界放出型走査電子顕微鏡による電子背面散乱回折解析法を試みる。
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Causes of Carryover |
当初外注予定だった2次イオン質量分析を海洋研究開発機構・高知コアセンターで行うことができ,分析費用を大幅に節約できたため次年度使用額が生じた。2020年度においては,この次年度使用額をイオン注入外注費用に用い,様々な条件でのイオン注入を行って,最適条件の探索に応用する。
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