2019 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis of sub-nanoporous boron nitride and its development as adsorbents and catalysts
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19K05650
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大久保 貴広 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (30385554)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 窒化ホウ素 / 鋳型法 / ガス吸着 / ミクロ孔 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は窒化ホウ素(BN)に対して狙ったサイズのミクロ孔を付与するための材料設計指針の確立と、得られた材料のガス吸着特性を検討した。当初の計画に従い、ナノカーボン類を鋳型としたハードテンプレート法と、BN前駆体以外の物質を用いない方法の2つの方法からアプローチした。その結果、鋳型を用いない方が得られる材料の比表面積が大きくなることが分かった。例えば、前駆体であるホウ酸に対して尿素を5倍量粉末にて混合した後に窒素気流下1473 Kで焼成した試料のミクロ孔容量および比表面積が最大となる試料が得られ、細孔の形状がスリット型であると仮定した場合に約0.7 nmのミクロ孔が形成されていることに対応することがわかった。更に、得られたミクロ孔性BN(pBN)の安定性を検討するために熱重量(TG)測定を行った結果、市販の結晶性BN が1273 K 以上で空気中の酸素により酸化される一方で、pBNは873 K付近から酸化されることが分かった。XPS解析の結果から、pBNには通常のBN結晶では見られない位置にB1sとN1sのバンドがみられたことから、これまでに報告例がない表面状態が形成されている可能性が高く、得られた試料の細孔表面は微細かつ化学的に反応性に富んだサイトで構成されていると考えられる。 得られた試料に関して、沸点が近い窒素とアルゴンを吸着質としてガス吸着特性を検討した。その結果、pBNでは活性炭よりもアルゴンに対する窒素の吸着量比が大きくなり、四重極モーメ ントを有する窒素とpBNとの相互作用が強いことが分かった。この窒素とアルゴンとの吸着量比の傾向はpBNを創製する際の焼成温度が低いほど大きくなり、pBNにのみ形成される活性なサイトが窒素と強く相互作用している可能性が示唆され、pBNがガス吸着能の点で炭素材料とは大きく異なる化学的性質を有している可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はミクロ孔性BNの創製手法および得られた材料のガス吸着特性についての知見を得ることができた。材料の創製手法に関しては当初の目論見から外れて、鋳型を使わない方が細孔を発達させるという点で優れているとの結果を得た。一方、ガス吸着特性という点では、窒素に対する高い吸着性能という点で非常に興味深い成果が得られた。当初の計画では二酸化炭素に対する高い吸着性能を期待していたが、二酸化炭素については炭素系材料とほぼ変わらない吸着性能を有していることが予備的な検討で見えてきた。当初のアイデアどおりのガス吸着性能を示したものと、当初の計画に反する結果に終わった点もあるので、基礎研究の立場から、ミクロ孔性BNのどのような化学的性質がガス吸着特性を決めているのかという点について更に掘り下げた研究を展開する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、得られたBN材料に対して活性な表面化学種を付与するための手法を確立する。例えば、表面のホウ素種の一部にダングリングボンドを付与するための焼成手法を検討する。得られた材料の評価は、学内外における各種装置(XPS, TG-MS等)により評価すると共に、窒素をはじめとするガス吸着量測定により小分子固定化能や触媒能の指標を得る。 2019年度の研究によりミクロ孔性BNが窒素と強く相互作用する結果が得られた点は大きな前進であるが、触媒として窒素を化学的に活性化するためには未だ弱い相互作用であると考える。上述したとおり、試料にダングリングボンドを付与するなどの施策の他、ホウ素や窒素以外の異種元素をドープすることで、窒素分子等との相互作用を更に高める工夫が必要であると考えられる。2020年度の研究では細孔を付与するための鋳型としての炭素材料ではなく、炭素種をBN構造内にドープする目的で、ナノカーボン類を前駆体の一部として含有した新たな創製手法の確立にもチャレンジする。
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Causes of Carryover |
本科研費で購入した熱分析装置(TG-DTA)を他の研究費との合算で購入したことで、当初の予算から減額することができ次年度使用額が生じた。これらの研究費は2020年度においてガラス器具類および真空部品類の購入に充当する予定である。
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