2020 Fiscal Year Research-status Report
納豆菌を用いた鶏腸内に生息するカンピロバクター駆逐と腸内フローラへの影響
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19K05910
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
門屋 亨介 椙山女学園大学, 生活科学部, 准教授 (10624942)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カンピロバクター / 納豆菌 / 増殖抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、主要な細菌性食中毒の原因であるCampylobacter jejuniをフードチェーン内から撲滅し、食卓に安全な鶏肉を提供することを目的とする。近年注 目を集めている納豆菌を用いたヒト腸内フローラ調整、および、病原微生物増殖抑制による原因微生物駆逐の概念を鶏に応用し、鶏腸内から病原微生物を駆逐す る。実験室内研究により納豆菌近縁種の枯草菌には多くの病原微生物に対して増殖抑制効果があることが明らかになった。納豆菌を軸にした生菌剤を利用する本 研究の最大の利点は、抗生物質利用と比較し多くの病原微生物に対して強い増殖抑制効果をもち、耐性菌の発生もなく、ヒトや動物に対する病原性がない安心・ 安全な菌である等である。 昨年度は、昨年度枯草菌をモデルとして構築した増殖抑制効果検討法を用いて独立行政法人製品評価技術基盤機構(NBRC)から由来の異なる納豆菌10株を譲渡してもらいCampylobacter jejuniの増殖抑制効果を確認した。全ての納豆菌株で増殖抑制効果が観察されたが、効果にばらつきが存在し、納豆菌株に依存した増殖抑制効果があることが予想された。納豆菌株を培養した培地から菌を除去した培養上清でも増殖抑制効果が観察されたが、認められた株は1株だけであった。さらに納豆菌10株から染色体DNAを抽出し、既に枯草菌で報告がある抗菌物質産生遺伝子のプライマーを用いてPCRを行った。その結果、PCRパターンは大きく3つのグループに分類された。これらの結果は、同じ納豆菌でもCampylobacter jejuniに対する増殖抑制効果機能が異なっていることを示唆している。 現在、培養上清に増殖抑制効果があった納豆菌株に対して、抑制物質の特定を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度で研究が遅れた理由については大きく2つ考えられる。(1)新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言により学校設備が利用できなくなり、研究不可能な事態になったこと、(2)2019年度に本学に赴任したが、実験動物を扱う研究設備等が整っておらず、準備に時間がかかったこと、である。 実験動物を扱う研究設備等については、徐々に実験準備を整えており2021年度中盤には稼働予定である。2021年度には十分な研究を行うことを予想している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度前半では、培地上清で増殖抑制効果があった菌株と生菌で最も増殖抑制効果が高い株を実験動物腸内に接種し、腸内への定着、腸内フローラへの影響を観察する。その後、Campylobacter jejuniを感染させた実験動物に対して接種し、腸内でのCampylobacter jejuni増殖抑制効果を観察する。また、腸内フローラ観察だけでなく、実験動物本体への影響も観察予定である。 また、抗菌物質の特定も行う。特に増殖抑制効果があった培地上清については、物質の特定を行う。抗菌物質は化学物質またはペプチドの可能性がある。また、培地上清に増殖抑制効果がなかった株についても、抗菌物質濃度の問題などを考慮し、培養容量の増加、菌体から全タンパク質を精製し増殖抑制効果の確認など様々な可能性を考慮し研究を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言で大学が閉鎖されたため、研究の進行が大幅に遅延した。また、緊急事態宣言後も学生の通学制限により、研究の人手が減少したためである。 2021年度は本来予定されていた実験に加え、昨年度に実施することができなかった動物実験や腸内細菌メタゲノム解析を行うことを計画している。本年度十分な時間研究することができれば、本来の研究計画通り進行する予定である。
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