2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K06013
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
深山 陽子 福島大学, 食農学類, 准教授 (00502098)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生理障害 / トマト水疱症 / 水ポテンシャル / 環境制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年生産現場で問題となっているトマト生理障害水疱症の発生メカニズムの解明と発生予測を目的としている。 前年度の研究では、乾燥条件から湿潤条件に移行したときの植物体の水ポテンシャルの急上昇が水疱症の発生要因の一つである可能性を見出した。また、水疱症の品種別発生程度は地上部/地下部重比(SR比)と正の相関があり、SR比が大きい品種ほど乾燥条件下で水ポテンシャルは低下し、湿潤条件に移行したときの上昇幅が大きいことを明らかにした。 令和2年度は、水疱症が発生しやすい品種‘桃太郎ピース’を用い、人工気象室内で乾燥条件(相対湿度50%)から湿潤条件(相対湿度90%)に移行する直前の土壌水分率を3水準設けて実験した。その結果、土壌水分率が低く、植物体の水ポテンシャルの上昇幅が大きいほど水疱症の発生率が高いことが明らかとなった。また、実際に生産者が使用している閉鎖型苗生産施設内の環境を調べたところ、潅水時に土壌水分率と相対湿度が急上昇することが計測された。そこで、潅水回数を慣行(1回/日)より多く(3回/日)して、潅水直前の土壌水分率を高くしたところ、水疱症の発生開始を遅らせることが可能であった。 一方、水疱症は紫外線強度が低いときに発生するという既報がある。そこで、紫外光を含む光源と含まない光源を用いてトマトを育てたところ、紫外光を含まない光源で成育したトマトのほうが根量が少なくSR比が大きくなり、乾燥条件から湿潤条件へ移行する直前の植物体の水ポテンシャルが低くなることがわかった。太陽光下で紫外線カットフィルムと紫外線カットしていないフィルムで育てたトマトについても同様の結果を得た。以上より、水疱症は、植物体のSR比が大きい場合に乾燥条件から湿潤条件に移行したときの植物体の水ポテンシャルの上昇幅が大きくなり、細胞のバーストを引き起こしやすくなった結果として生じると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工気象室等を用いて水疱症の発生メカニズムの新たな知見を得るとともに、実際に生産者が用いている閉鎖型苗生産装置における水疱症発生抑制方法の開発につながる成果を出していることから、研究課題の主目的は達成している。一方、発生予測式の作成については、植物体の特性データも必要であることが明らかになったことから当初計画よりも取得すべきデータが必要であり、継続して行うことにした。以上を総合的に勘案しておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
水疱症の発生に湿度環境が及ぼす影響について明らかにするとともに、水疱症発生を防止する環境制御法を検討・実証する。併せて水疱症の発生予測式を作成する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において、学会・研究会等が中止または遠隔開催となったため、旅費の執行がなかった。また、雇用も控えたため謝金の執行がなかった。以上により、次年度使用額が生じた。次年度は論文発表が当初計画より多い予定のため、前年度からの繰越額を併せて執行する見込みである。
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Research Products
(2 results)