2019 Fiscal Year Research-status Report
果実軟化に関与するエクスパンシンの機能解明と分子構造研究
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19K06023
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
石丸 恵 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (90326281)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エクスパンシン / モモ果実 / 軟化 / 細胞壁構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は,PpEXP1が加水分解活性を有することの解明とモモ果実の細胞構造変化を明らかにすることを主体に研究を進めました. その結果,PpEXP1がセロオリゴ糖に対して,4糖までは反応せず,5糖を2糖と3糖に6糖を2糖と4糖に加水分解することを再確認し,加水分解活性を有することを確認した.また,CMCセルロースに対しても粘度低下を起こすことを確認し,PASCにおいては,モモ果実由来のセルロースから2糖から5糖までを遊離することも確認できた. さらに,あいちシンクロトロン光センターにおいて,モモ果実の未熟果実と成熟果実のSAXS測定を行った結果,成熟に伴い高分子領域から低分子領域へのシフトが確認され,品種による程度の違いも確認できた. 以上のことから,モモ果実由来のエクスパンシンが,加水分解活性を有すること,成熟に伴い,細胞壁の構造が変化していることを明らかにできた.しかし,構造解析のためのPpEXP1の大量発現については,新たに購入したファーメンターの条件検討が必要であることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の一つである高感度信号累積型ISFETバイオセンサーを用いたセルロース分子間の水素結合の切断活性について,得られた結果が不安定で,モモ由来のセルロースが化学的な断片化によるもので可能性が示唆された.現在,モモ果実由来のセルロース抽出方法について検討を行っている.また,SAXSによる解析が予想以上であったことから,さらにPpEXP1との反応性による変化を測定する予定にしている. 新型コロナウイルスの影響で2月以降の実験が進められていないこともあるが,初年度の結果としては概ね順調に進んでいると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,PpEXP1とモモ果実由来のヘミセルロースもしくは,キシログルカンおよびキシランなどのオリゴ糖との反応性を調査する予定にしている.また,SAXSによるモモ果実とPpEXP1の反応によって,細胞壁の構造変化が成熟に伴う細胞壁の構造変化との相違性について進めていきたい.具体的には,成熟によって低分子化する領域の構成多糖類を標的に,未熟果実にPpEXP1を添加することにより成熟果実の細胞壁高分子領域の変化が低分子化と一致するかについて検討を行う. また,PpEXP1の構造解析を進めるため,タンパク質の発現量の条件検討を引き続き行う予定である.
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Causes of Carryover |
本年度の年度末に実験材料のサンプリングのための物品費と旅費を計上していましたが,新型コロナウイルスの影響でこれらの予定が中止となったことから,次年度使用額が生じました. これらの予算につきましては,次年度に改めて実験が再開できる時期に適正に使用したいと考えています.
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