2019 Fiscal Year Research-status Report
チョウ目幼虫のもつ突出した頭部突起が果たす役割の解明
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19K06079
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
香取 郁夫 近畿大学, 農学部, 准教授 (00319659)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土原 和子 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (10300823)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゴマダラチョウ / アシナガバチ / 野鳥 / 生存率 / 突起有 / 突起無 / 突起接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゴマダラチョウHestina japonicaの幼虫の頭部にある一対の長く硬い突起が、天敵に攻撃された時に身を守るための防具として使われているのではないかという仮説「天敵からの防衛仮説」を検証した。 実験1では、野外の食樹であるエノキに幼虫をつけてビデオ撮影を行い、幼虫の天敵相を調査した。春から秋にかけて121回の天敵による攻撃シーンを観察した。内訳はセグロアシナガバチとヤマトアシナガバチをメインとするアシナガバチ亜属が87%を占め最も多く、2位の野鳥(シジュウカラとホオジロ、8%)に大差をつけた。また、幼虫はアシナガバチの攻撃をかなり防いだが(生存率=防衛成功率=66%)鳥の攻撃は全く防げなかった(同0%)。 実験2では、野外アミ室内においてゴマダラチョウ幼虫を天敵に襲わせる捕食実験を行った。具体的に、突起有(通常幼虫)、突起無(突起を焼き切った幼虫)、突起接着(突起無の幼虫に他個体の突起を接着した幼虫)の3処理区の幼虫を事前に作成し、野外で最も攻撃回数の多かった天敵セグロアシナガバチに襲わせた。その結果、突起有(12/15=80%)と突起接着の幼虫(10/15=67%)は突起無の幼虫(1/14=7%)より防衛成功率が高いことを突き止めた。 ゴマダラチョウ幼虫がアシナガバチに攻撃された時の防衛の仕方を観察したところ、幼虫は頭部突起を用いて防衛していたが、突起を反撃の武器として振り回すというよりむしろ、幼虫の急所である首元をガードするために固定し防具として用いていた。 以上の結果はいずれも仮説を支持した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験用の昆虫が全く支障なく十分数確保できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ゴマダラチョウに関してはSEMによる突起表面の微細構造の観察と感覚子の種類の見極めを行い、突起の役割に関してヒントになるような微細構造が見つかるかどうかを調べる。 これをもって、ゴマダラチョウの検証実験はすべて終了とする。その後は、ホソオチョウ幼虫を用いて「仮説A:柔らかい突起は食草探索に役立つ」の検証実験を行う。また奄美大島で現在発生が確認されているフタオチョウを用いて、「仮説B:硬い突起は天敵からの防衛に役立つ」の検証実験もスタートさせたい。
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Causes of Carryover |
実験昆虫飼育のための食草栽培や畑の管理に必要な培養土の購入などが当初の想定より少なく済んだため、また学外調査のための時間を十分に捻出できず、当初の想定よりも旅費が少なく済んだため。 実験や調査の補助、実験データの解析を行うためのアルバイト代、分担研究者との打ち合わせや情報交換のための旅費を十分に盛り込み研究活動を活発化する。
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Research Products
(1 results)