2019 Fiscal Year Research-status Report
Biodiversity in urban hardscapes: Fundamental study based on the reconciliation ecology
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19K06104
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
村上 健太郎 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00598386)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 石垣 / ノベル生態系 / 壁面緑化 / 景観生態学 / シダ植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
中部地方全域において路傍のハードスケープハビタット(人工的で硬質な生育場所)に成立するシダ植物群落計3,310箇所を調査した結果、石垣選好種が多く、また石垣の種多様度が最も高いことが明らかになった。石垣選好種の46.6%は本来的に岩崖種であったが、66.6%は林床・林縁種であり、岩崖種を上回った。地方版も含めた日本のRDBにおけるシダ植物の生育地に関する記述についての文献調査では、日本の全シダ植物(約700種)の5%にあたる35種が石垣に生育する特性を持っていた。このうち71.4%は岩崖種であったが、37.1%は林床・林縁種であった。 歴史的な石垣構造物の調査として、造成から少なくとも100年以上が経過した市街地路傍の石垣(京都市;白川石と呼ばれる地元産の黒雲母花崗岩が材料)を調査した結果、より新しい石垣には生育せず、白川石に偏って生育する種としてギフベニシダ(林床・林縁を本来の生育地とする)が抽出された。本種は京都府RDB不掲載であるが、全国10箇所の都府県で絶滅危惧種に指定されている。同様に、1902年前後に行われた要塞化の際に築造された石垣構造物が多い函館山(函館市)において、シダ植物群落の調査を行ったところ、シダ植物の一種コタニワタリの分布が、本来の生育地である林床や岩礫地よりも石垣に偏っていることが明らかになった。本種は北海道では稀少種とは言えないが、分布限界近くの本州南岸線沿い都府県を中心に多くの地域で絶滅危惧種に指定されている。 これらのことは、稀少種を含めて多くのシダ植物が石垣を二次的な生育場所とすることができることを意味しており、条件によっては林床・林縁種の生育地としても機能することを意味していると考えられた。都市や都市近郊において生物多様性保全を遂行していく上で、石垣はシダ植物の生育場所として、もっと有効活用できると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定としていた「(i)生物によるハードスケープ利用事例調査」に関しては、予定通り、3月にLandscape and Ecological Engineering誌に論文投稿を行い、査読プロセスに入っている。 「(ii)歴史的遺産ハードスケープ調査」については函館山の調査を2019年5月から行っており、一部については既に学会発表も行い、2020年度も継続的に調査を行う予定であって、当初の予定通りである。ただし、予想していたよりも多くの石垣があることから、調査はもう少し時間がかかりそうである。 「(iii)市街地ハードスケープ調査」については、以前、取得していた市街地ハードスケープのデータを基にした論文を日本緑化工学会誌に投稿し受理された。他方、予定していた秋田県における調査の予備調査については実現しなかった。その代わりに、2019年10~11月に京都市の一乗寺地区~修学院地区において、伝統的な石素材である白川石による石垣が多く残る地域においてシダ植物の生育状況と土壌含水率、光環境等に関する環境要因との関係について調査を行うことができた。この調査は今年も継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
(i)生物によるハードスケープ利用事例調査:石垣はノベル生態系の事例の一つであり、この概念を用いることによって、生物多様性保全オプションの幅が広がることが諸外国の研究で明らかになっていることから、石垣をはじめとした日本におけるノベル生態系の活用方法について、文献調査を中心に検討していきたい。
(ii)歴史的遺産ハードスケープ調査: 函館山の調査を函館山全域で行い、造成年度の違いが種組成の違いと関連しているかについて調査する。また、2019年度は函館山のごく一部の調査にとどまっていたため、函館山のできるかぎり広い範囲においての野外調査を予定しており、既に管理者である函館市とも2020年2月に事前ミーティングを行っている。
(iii)市街地ハードスケープ調査: 2019年度に行った京都市の一乗寺地区~修学院地区の石垣調査を継続し、1回の調査では取得できなかった環境要因の調査を行うとともに、各学会において、研究成果を公表していく予定である。また、2018年度以前に行った九州地方~沖縄地方のデータ、関東地方~東北地方のデータ(いずれもシダ植物群落における資料)をもとにした学術論文を執筆する予定である。
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Research Products
(6 results)