2021 Fiscal Year Research-status Report
Biodiversity in urban hardscapes: Fundamental study based on the reconciliation ecology
Project/Area Number |
19K06104
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
村上 健太郎 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00598386)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ハードスケープハビタット / ノベル生態系 / 擁壁 / 海崖植物 / シダ植物 / 外来植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の生育場所として見た場合,硬質人工構造物(ハードスケープ)は岩崖や岩礫地の環境と似ている要素がある。そこで,ハードスケープの生育地(HH)を本来の生育地(OH)の類似物と考えることができるかについて検討した。 事例1:海崖植物にとっての路面間隙(HH)及び海崖(OH) 北海道南部及び青森県西津軽地方の海岸(海崖)に近い路面間隙で植生調査を行った結果,両地域で稀少植物を含む海岸種(主に海崖種)を複数記録した。ラセイタソウ等の海崖種では海崖からの距離に負の影響を受けることが明らかになった一方,ノラニンジンなどの外来植物は海崖からの距離が遠ざかるにしたがって生育確率が高まることが分かった。OHからの距離に負の影響を受けるということは,路面間隙は海崖種のシンクハビタットとして機能している一方,ソースハビタットとしての機能は限定される可能性が高いと考えられた。 事例2:森林生シダ植物にとっての人工水路護岸や擁壁(HH) 都市近郊にある大規模造成緑地(万博記念公園自然文化園;大阪府吹田市)の小水路護岸(石組みによる)においてシダ植物の種組成を調査した結果,シケシダなど都市~農村の人工水路に生育する種が多いことが明らかになったが,一部で園内未確認の森林生稀少種が確認された。山林の樹幹や岩崖をOHとする稀少なシダ植物ビロードシダについて,大阪府,広島県等の4府県で生育状況調査を行った。その結果,本種は,石垣やコンクリート壁においてもOH(樹幹や岩崖)と大差なく生育していることが明らかになった。 考察:路面間隙は水平的HHであり,海崖のような垂直的OHとは異なる要素もあるため,擁壁などの垂直的HHが海崖植物の生育地として路面間隙と同様であるかについて確認する必要がある。森林生シダ植物では,石垣や擁壁の有効性が確認されていることから,海崖種においても垂直的HHとしての擁壁は有望である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年2月~4月にかけて,研究代表者が病気のため入院したことにより,野外調査の実施や論文執筆に遅れが出ていたが,2021年度前半の状況よりは進んでいる。 日本の都道府県別レッドデータブックの掲載種の生育地情報をすべて閲覧して石垣に生育する稀少種情報を整理してその特性について分析した研究論文,海崖植物ラセイタソウの生育地において本種の擁壁での生育状況について調査してその生育特性を明らかにした研究論文,関東から東北地方にかけての市街地路傍のハードスケープにおいてシダ類のハードスケープハビタット選好性や種組成に影響する気候要因の特定を試みた研究論文などを投稿中である。また,調査中のフィールドとして京都市左京区あるいは鹿児島県出水市等があり,それぞれシダ植物を中心とした植生データの取得に努めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
外来植物や雑草だけでなく,在来植物や稀少植物が石垣・コンクリート壁などのハードスケープに生育するという事例については,一程度,蓄積が進んでいると考えられる。その一方で,ハードスケープに生育する環境要因の特定についてはそれほど進んでいるとは言えないことから,特定可能な環境因子に着目し,明らかにしていく。 例えば,シダ植物の生育地としての石垣において,重要な物理環境として斜面方位(石垣の向き;光環境や土壌水分に影響し,シダ植物の移入・定着に影響すると推測される)がある。山林などの自生地では北面がシダ植物の生育に好適という研究があるが,石垣などの硬質構造物による人工的環境下では,研究例がほとんどなく不明である。昨年度までに調査を行ってきた京都市左京区あるいは鹿児島県のフィールドのいくつかでは,方位に偏りなく多数の石垣が立地し,なおかつ古くから継続的に町並みが保全され,残存してきた場所がある。これらの石垣に生育するシダ植物群落について詳細に調査し,稀少種や種多様度と斜面方位や光環境などの物理的環境との関係を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
2021年2月~4月にかけて,研究代表者が病気のため入院したことにより,野外調査の実施や論文執筆に遅れが出た。今年度行う野外調査の交通費または執筆中の研究論文の英文校閲費で使用される見込みである。
|
Remarks |
池田瞬哉・吉田創・村上健太郎「路面間隙に海崖生植物群落は成立するか?」(2021年度日本造園学会北海道支部大会;2021年10月実施)がポスター発表奨励賞を受賞した。「七飯町歴史館(北海道亀田郡七飯町)夜の博物館2021年度後期講座 道南地域における都市の植物種多様性保全」(2022年3月実施)において,本研究の成果の一部をもとにした講演を行った。
|
Research Products
(8 results)