2021 Fiscal Year Research-status Report
Effects of soil environments on responses of ecosystem functions of Collembola communities against to global warming
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19K06126
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菱 拓雄 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50423009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兵藤 不二夫 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (70435535)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オープントップチャンバー / 温暖化装置 / 土壌呼吸速度 / 凍結融解 / 土壌乾燥 / トビムシ / PLFA |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌生物群集の構造と機能に、長期的な環境条件としての立地条件と、温暖化実験処理の影響がどのように影響するのかについて明らかにする調査を行った。これまで、温暖化の実験の多くは生物群集のそれまで経た環境の経験の影響(レガシーエフェクト)を無視したものが多かった。本研究では近年着目されているレガシーエフェクトにより、立地条件によって土壌性トビムシ群集構造の種構成や機能形質が異なる方向の影響を受けることを明らかにしており、土壌動物群集の機能形質が、山地地形によるレガシーエフェクトの影響を強く受けていることを示す証拠が得られた。 成果公表として、今年度は温暖化に深く関係する自然の環境傾度である標高と、季節変動が、トビムシ群集の種、個体形質に強く影響し、特に強いストレスがかかる冬にのみ形質選択が生じ、それ以外の季節には標高による形質選択が生じないという形質選択の季節依存性を見出したという発見について国際学会で発表を行った(ICSZイタリア、オンライン)。また、日本で現在消失している下層植生の密度が土壌の安定性を増加させるプロセスをトビムシ群集から説明できることを示す研究成果を国際学会で発表した(ICA、イタリア、オンライン)。また、標高傾度や、日本の気候傾度に沿ってトビムシ群集の形質値がどのように変化するのかについても国内学会(日本土壌動物学会、日本生態学会)で発表を行った。 また、この研究が前提としている斜面方位での土壌動物群集の違いについて、査読付き学術専門誌上で英語論文を公表済みである。 本研究課題での実験結果は充分に意義あるものであり、関連する研究結果の公表は十分に行っている状況である。したがって当該年度の実績は順調に進捗しているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、温暖化の実験の多くは生物群集のそれまで経た環境の経験の影響(レガシーエフェクト)を無視したものが多かった。本研究では近年着目されているレガシーエフェクトにより、立地条件によって土壌性トビムシ群集構造の種構成や機能形質が異なる方向の影響を受けることを明らかにしており、これまでのところでも国際的に重要な結果が得られている。本研究の結果は学会大会などで発表しており、論文についての執筆も進めているところであり、進捗も概ね順調である。 また、関連する研究の学術論文、学会での成果発表なども順調に行っている。 以上から、執行した予算に対して十分な成果が得られつつあるといえる。 ただし、ターゲットとしていたトビムシ、土壌微生物についての温暖化への反応がそれまでの群集構造に強く影響されていることは明らかにできたが、これに大型動物が温暖化を通して間接的に影響を与えているのかどうかについて確認する必要が生じた。したがって、結果のメカニズムを確認するための追加調査が必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題はコロナ禍の影響もあり、微生物、小型節足動物に強く影響を与える大型土壌動物についての観測が不十分なところがあるため、研究期間を延長している。今年度は補足データを採取し、温暖化実験3年目で実験を終了する。残りの実験を終了し、成果を学会、および学術誌上で公表していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって必要な調査を行うことができなかったため、次年度に追加の調査を行う。 次年度は温暖化の処理3年目における微生物の群集構造と、呼吸量の定量を行う。また、これまではトビムシ群集のみについて群集解析を行ってきたが、大型動物についての調査を追加で行う。これによって、立地と温暖化処理が大型動物を介して微生物機能にどのように影響を与えているのかについてまで、より詳細な結果を得ることができる。 使用の内訳は、研究試料の採取に関する旅費、調査補助にかかる人件費、化学分析費、および成果公表のための執筆にかかる経費などについて、およそ20万ずつを計上する予定である。
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Research Products
(8 results)