2022 Fiscal Year Annual Research Report
冬期の寒冷は冷温帯林つる植物の通導機能と光合成生産を特に阻害するか?
Project/Area Number |
19K06127
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
市橋 隆自 九州大学, 農学研究院, 准教授 (60594984)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | つる植物 / 通導 / 凍結 / 根圧 / 冷温帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,冷温帯林に生育する木本性つる植物と樹木を対象に,冬期の低温に対する水分通導機能・光合成生産の反応を明らかにすることを目的としている. 今年度は,樹木・つる植物において春先に発生する根圧観測法の開発に注力した.最終的に,径2.5 mmの中空ネジを幹に1~2 cmの深さまでねじ込んで固定,ネジ頭に水を満たしたチューブを接続し,そのチューブを圧力センサに接続する方法で計測に成功した.2月からは野外で13種×3個体のモニタリングを開始し(4月末まで継続),種ごとの根圧の有無とその大きさ,時間変化を記録することに成功した.樹木のミズキ,ミズメとつる植物のサルナシにおいては最大で200 kPa(高さ20mまで水を押し上げる強さ)程度,樹木のアカシデ,ヒメシャラ,つる植物のマツブサにおいては最大で100~150 kPa程度の根圧が観測された.他の樹木5種,つる植物2種においては明瞭な根圧は観測されなかった. 研究機関全体を通し,つる植物4種,樹木9種(各種3個体)を対象に,樹液流通年モニタリング,茎通導度の季節変化(展葉期,夏期,冬期の年3回),春先の根圧モニタリングを実現させた.つる植物は,夏期の茎通導度が樹木の10倍前後高いなど顕著な特徴を示した.寒冷に対する反応について,樹木,つる植物どちらにおいても,(1)環孔材的に当年の導管のみに通導を頼る、あるいは(2)展葉前に根圧を発生させて通導を回復させるという、異なる対処の仕方が確認された.(3)複数年の導管を使って通導するが,春先に根圧を出さないというタイプは樹木のみでありつる植物では確認できなかった.これら研究結果は先例のない発見を多く含み,温帯つる植物の生態について,また同地域の樹木も含めた植物の寒冷への対処についての理解を深める重要な成果である.
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