2021 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な地域農業構築に向けた枝番集落営農の組織再編とその条件
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19K06278
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
渡部 岳陽 九州大学, 農学研究院, 准教授 (10371014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
品川 優 佐賀大学, 経済学部, 教授 (10363417)
平林 光幸 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (40448650)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 集落営農 / 地域農業再編 / 集落営農の法人化 / 枝番管理型集落営農 |
Outline of Annual Research Achievements |
設立後15年が経過した枝番管理型集落営農が広範に展開した地域として、東北から宮城県加美郡、北九州から佐賀県白石町をピックアップし、①集落営農自体にどのような変化が生じたか、②集落営農の「変化」に伴って地域農業の構造はどのように変動したのか、について分析を行った。 ①については、加美郡においては現状維持が大半であり、一部が法人化していた。それは単一集落を基盤とした集落営農であることに起因しており、人材が集落という狭い範囲に制約していることが関係していた。一方、白石町においてはカントリエレベーター単位の法人化が進行していた。それは単一集落を範囲とした集落営農は多かったが、同時に多くの農家がカントリエレベーターの共同利用組織に所属していたことに起因していた。両地域において、時間の経過とともに集落営農から構成員が離農や脱退を通じて減少している点が共通していた。 ②について、2005-10年(「形式的」両極分解)および2010-15年(「中農標準化」)は、両地域で同様の傾向が見られた一方、2015-20年は大きく異なっていた。加美郡では「実質的」両極分解(中小規模農家減少と大規模経営体の農地集積の並進)が進み、白石町では中・大規模個別経営体の成長が見られた。こうした違いの背景には、加美郡では集落営農脱退後に両極分解(多くは離農へ、一部の後継者を有する経営体が法人化を通して大規模化、集積を進める)したのに対して、白石町では脱退した構成員の多くが後継者を確保した水田複合経営であり、彼らが層として経営発展・規模拡大を進めたことがあった。これは集約型複合部門をベースに個別経営的発展を志向できる経営体の「層の厚さ」の違いによるものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナの影響により、最低限の現地調査しか行うことができず、分析結果も不十分な内容にとどまった。3年目に行う予定だった研究内容については、そのまま次年度に繰り越す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査地を北九州に拡大し、カントリーエレベーターの範域で数百ha規模の集落営農を構築している佐賀県の大規模集落営農(佐賀市、神埼市、鳥栖市、白石町)、10数集落で集落営農を立ち上げた熊本県(菊池郡)、集落営農を多く展開する大分県の宇佐市を対象に調査を行う。東北における現地調査結果もふまえて、組織再編を通じて枝番集落営農が参加農家とどのように協同関係を形成しているのかを総合的に考察する。 また、地形的条件や農業構造問題などの共通点を有する韓国にも対象を広げ、水田農業の盛んな全羅北道の群山市、京畿道の利川市において国内と同様の実態調査を行い、地縁的生産組織の展開過程を分析し、組織と参加農家との協同関係形成に向けた枝番集落営農の発展のあり方が我が国特有のものなのかについて比較を行う。 以上の国内外の分析結果を踏まえて、参加農家との協同関係形成に向けた枝番集落営農の組織再編のあり方を解明するとともに、そうした再編を可能とする条件を明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナの影響により、予定していた現地実態調査が全く行うことができず、旅費としての支出がなかったことが次年度使用額が生じた理由である。次年度においては、今年度予定していた調査も含めて精力的に調査を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)