2023 Fiscal Year Research-status Report
A model of compensatory evolution for microRNA and its target genes
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19K06789
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
楠見 淳子 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (20510522)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯塚 勝 福岡女子大学, 国際文理学部, 学術研究員 (20202830) [Withdrawn]
一ノ瀬 元史 筑紫女学園大学, 現代社会学部, 教授 (30150460) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 補償的進化 / miRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
miRNA分子内の相補配列は構造上重要であるだけでなく、一部はターゲットとする遺伝子の相補配列と直接作用する配列(ガイド鎖)となっており、miRNAとターゲットとする遺伝子間の相補配列は共進化していると考えられる。本研究課題では、miRNAの作用機序に基づいた分子進化モデルを構築し、シミュレーション解析によりその進化の動態を解明する。これまで行ったシミュレーション解析から、ターゲットとする遺伝子とmiRNAが1対1で対応するモデルとターゲットとする遺伝子に対して複数のmiRNAが作用するマルチターゲットモデルを用いたシミュレーションにおいて、ある条件下では補償的進化の効果により新規の変異の平均固定待ち時間が短くなることが示した。本年度は、マルチターゲットモデルを用いたシミュレーション解析を引き続き進めた。特に、マルチターゲットモデルでは、miRNAの重複や消失の効果について検証するため、これまで用いたモデルに欠失の効果を加えたモデルを構築し解析を試みた。しかし、新しいモデルを元にしたシミュレーションの結果は欠失を考慮していないモデルとの違いが小さく、欠失の効果を十分に反映できていない可能性が高い。現在、シミュレーションプログラムの精査をおこなっている。また、モデルの妥当性を検証するため、複数種のモデル生物におけるmRNAの変異量データについても追加解析、検証を重ねたものの、モデルを支持する結果はこれまでに得られていない。次年度は、現在検証しているような一般的なモデルではなく、特定のmiRNA遺伝子に焦点を絞り、実態に合わせたモデルを構築し、再度検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
すでに、シングルターゲット(1対1)マルチターゲットモデル(1対2)を用いたシミュレーションについては、固定待ち時間と各遺伝子座の変異量(平均ヘテロ接合度)についての解析を終了している。シミュレーションの結果からは、シングルターゲットモデルでは、miRNAとターゲットとする遺伝子間の連鎖が強いほど固定待ち時間は平均的に短くなり、その効果は特に、miRNA分子内、ガイド鎖とターゲット遺伝子間の相補性が同等に適応度に影響する場合に強く現れていることが示された。また、マルチターゲットモデルを用いたシミュレーションを行ったところ、2つのターゲット遺伝子の有害度を重み付き平均した適応度スキームの場合、シングルターゲットモデルよりも平均固定待ち時間が短くなる条件があることが示された。この結果は、遺伝子の重複や消失が相互作用するmiRNA遺伝子の進化速度に影響する可能性を示唆している。 しかしながら、これらのモデルの妥当性を検証するため実データの解析を合わせて行ってはいるものの、これまでに有意な結果はえられていない。また、特にマルチターゲットモデルについては、miRNAの重複や消失の効果について検証するため、これまで用いたモデルに欠失の効果を加えたモデルを構築しシミュレーション解析を試みているところである。 実データとの整合性が取れない理由としては、シミュレーションのモデルそのものが単純すぎることも考えられることから、次年度は、現在検証しているような一般的なモデルではなく、特定のmiRNA遺伝子に焦点を絞り、実態に合わせたモデルを構築し、再度検証する。シングルターゲットモデルの結果についてはすでに論文を投稿を試みているが、まだ受理には至っていない。今後、学会発表を含め進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は単純なモデルを用いて、miRNAの分子進化の動態を理解しようと試みていたが、実際にはそのような単純なモデルと実データとの整合性をとるのは非常に難しい。これは、実際のmiRNAは多様な組み合わせで遺伝子の発現制御が行われていることにある。例えば、miRNAの中には2つ以上のターゲットと相互作用するものがあり、これについてはまだモデルによる検証は行っていない。また、長い進化の過程の中で重複と欠失、偽遺伝子化を繰り返していることなどをうまくモデルに組み込めていないことも要因であると考えている。これについては昨年度から新しいモデルの検証を進めており、miRNAの重複や消失の効果と補償進化の効果についてシミュレーションによる解析を進めている。これに加え、次年度は、一般的なモデルではなく、特定のmiRNA遺伝子の進化に焦点を絞り、実態に合わせたモデルを構築し、検証を試みる予定である。上記の理由により、モデルの整合性の検証が不十分であるため、論文発表等の研究発表に至っていないが、次年度は受理に向けて再解析と論文改訂に取り組む。
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Causes of Carryover |
シミュレーション解析のモデル構築を一から再検討する必要がでてきたため、思うような進展が得られなかった。また、学務関連の業務に時間をとられたため、十分な研究時間を得られなかったことも研究の進展が遅れた原因となっている。 今年度は、現在投稿中の論文の改訂を進めるとともに、新規のモデル構築、検証をすすめ、学会発表等を行えるよう、計画的に研究を進める。
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