2020 Fiscal Year Research-status Report
上行性疼痛制御系モジュレーター分子としてのBDNF
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19K07260
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
小林 希実子 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (70418961)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / 炎症性疼痛 / 脊髄後角 / BDNF / 投射ニューロン / 腕傍核 |
Outline of Annual Research Achievements |
侵害受容ニューロンは主に脊髄後角の二次ニューロンとシナプスを形成する。ここには投射ニューロンと介在ニューロンが存在し、近年介在ニューロンにより構築される局所回路が痛みや痒みシグナルのプロセシングに重要であることが多数報告されているが、投射ニューロンに関してはどのような分子が痛みシグナルの伝達や痛みの可塑性に関与するのか、さらに痛みにより引き起こされる不快情動や抑鬱行動のメカニズムに関してわかっていない。 SD雄性ラットを用いて代表的な神経因性疼痛モデルであるspared nerve injury(SNI)モデルとComplete Freund's adjuvant (CFA)モデルを作成し、経時的にBDNFの発現変化を観察した結果、両モデルとも損傷もしくは炎症部位に該当する脊髄の髄節でのみ、脊髄後角の表層ニューロンで一過性の増加が見られた。そのタイムコースのサンプルを使用し、昨年度作成した二種類のBDNFのポリクローナル抗体の信頼性チェックを行った。その結果、二種類とも免疫組織化学法では正しく検出できない抗体であったため、in situ hybridization法を中心に実験を進めていくことを決定した。 投射ニューロンでBDNF遺伝子が増加することを確認するためにすでに投射先として知られている腕傍核に逆行性トレーサー(Fluoro-Gold)を投与して脊髄表層に存在する投射ニューロンの検出を行う。トレーサーを投与して10日後に疼痛モデルを作製し、発現がピークになるタイムコースで脳や脊髄サンプルを取り出し、トレーサーを抗体を使用して検出し、二重ISH-IHC法を行うことでBDNF mRNA発現ニューロンが投射ニューロンであるか否かを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年4月-5月は緊急事態宣言により、動物の新規購入・飼育ができなかったため動物を使用した実験を行うことができなかった。またCovid-19の影響により実験消耗品(ゴム手袋、マスク、50mlチューブなど)や試薬の入荷が遅れるトラブルがあったため、予定していた実験ができず、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
BDNFが増加するきっかけとなる因子を探索する。痛みが生じたときDRGの過剰興奮によりsubstance Pが大量に放出することが知られており、NK1受容体に作用することで上位へ痛み刺激が伝えられるとされている。このsubstance PがBDNFの発現を調節している可能性があるためNK1受容体拮抗薬を髄腔内投与し上記疼痛モデルを作製し発現がピークになるタイムポイントでBDNFの発現上昇が押さえられるかを確認する。また、他の候補因子も検討する。 次に、腕傍核でのBDNFの作用を押さえることで痛みの反応が押さえられるかどうかを検討する。TrkB antagonistを腕傍核に微量投与し、腕傍核付近におけるBDNFの作用を中和させる。痛み行動を観察し、上位中枢におけるBDNFの作用機序を明らかにする。また、NK1受容体阻害剤によりBDNFの増加を抑制できた場合にはこのモデルを使用して行動観察を行う。さらに、これらの阻害剤により腕傍核や扁桃体中心核外包部でのニューロンの活性化が阻害されるかどうかをMAP kinaseファミリーであるERKのリン酸化と転写因子のc-Fosを指標に観察する。
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