2020 Fiscal Year Research-status Report
好酸球ペルオキシダーゼ抗体の存在から難治性好酸球性気道炎症の新たな治療戦略を探る
Project/Area Number |
19K07949
|
Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
小林 良樹 関西医科大学, 医学部, 講師 (10375298)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神田 晃 関西医科大学, 医学部, 准教授 (70375244)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 好酸球ペルオキシダーゼ抗体 / 好酸球性ムチン |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度(2020年度)は、凍結保存してあったムチンサンプルの粘稠度の測定を行った。低濃度(0.1 μg/ml)のEPXで十分なムチン溶解が可能であることがわかった。一方で、興味深いことに、ムチンサンプルとBEAS-2Bを共培養すると経時的な粘稠度の低下が阻害されることが確認された。 また、気道上皮細胞BEAS-2Bに対するEPXの影響を検討したが、ムチン溶解に必要なレベル(0.01~1 μg/ml)においてBEAS-2Bの活性化や生存能に影響を与えなかった。一方で10 μg/ml以上の高濃度においては、BEAS-2BからType2炎症に関与するサイトカインや好酸球性ケモカインの産生が上昇することがわかった。 さらに、EPX-IgG抗体の好酸球に対する影響を検討するために、新たな実験系を立ち上げた。好酸球性ムチン上清からIgGを免疫沈降させたものでプレートコーティングして、末梢血分離好酸球を添加し、活性化好酸球から放出されるdsDNA(好酸球性etosis)を測定する系である。好酸球を添加する前に予めEPXを投与しておくとdsDNAの放出が減少することがわかった。この現象は、他の好酸球顆粒タンパク(MBP, EDN, ECP)ではみられなかったため、好酸球性ムチンに含まれるIgGは主としてEPX-IgG抗体である可能性が示唆された。 現在、ムチンの病理標本を用いた抗EPX抗体の免疫染色の至適化に取り組んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19感染症の影響もあり、新たな好酸球性ムチンのサンプリングの機会が減少してしまったため、フレッシュなムチン塊と気道上皮細胞の共培養の実験系は皆無の状況である。その代わりに、凍結保存してあったムチンサンプルを用いて、気道上皮細胞BEAS-2Bとの共培養の実験系を行い、遅れを挽回している。 また、同時にEPXおよび末梢血分離好酸球とBEAS-2Bとの共培養の実験系を確立させたことで遅れは最小限にとどまっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度(2021年度)も令和2年度(2020年度)に続きサンプリングに伴うCOVID-19感染のリスクが懸念されるため、研究目的のサンプリング(好酸球性ムチンやコントロールとしてのアレルギー患者からの鼻汁)は困難であると考えられる。 末梢血分離好酸球と気道上皮細胞BEAS-2Bを用いたin vitroの実験系に、好酸球性ムチン上清から免疫沈降させたIgGを組み込んで、EPX-IgG抗体の好酸球性気道炎症に対する影響(主にType2炎症に関与するサイトカイン、ケモカインやDNase Ⅰ活性など)を検証していく。 可能であれば、recombinant EPXを絡めて好酸球性気道炎症マウスモデルにおけるEPX-IgG抗体産生のメカニズムを探っていきたい。
|
Causes of Carryover |
サンプリング機会の不足から生じた研究計画のわずなか遅れに伴い、次年度使用額が生じた。 主に新たな実験系を進めていく試薬購入や研究促進のために協力していただく実験補助者への人件費などで使用する。
|