2020 Fiscal Year Research-status Report
Dimensional approach to mental disease through autoantibodies
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19K08019
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高木 学 岡山大学, 大学病院, 講師 (60452570)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抗NMDAR抗体脳炎 / 抗DRD2抗体脳炎 / 統合失調症 / 気分障害 / てんかん精神病 / 非定型精神病 / 神経発達障害 / 抗VGKC複合体抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
(臨床的検討)昨年度に続き、統合失調症、気分障害、てんかん精神病と臨床診断された患者約100名の髄液、血清で抗NMDAR抗体、抗DRD2抗体をCBA法で測定し、抗NMDAR抗体(+)が2名あり免疫療法を行った。市販の抗体検査キットを用い、抗LGI1抗体、抗CASPR2抗体、抗AMPA抗体、抗DPPX抗体、抗GABAB抗体の測定も開始した。てんかんや双極性障害、統合失調症とは独立した疾患であるが臨床症状を併せ持つ、本邦独自の疾患概念「非定型精神病」がある。非定型精神病の特徴は、①精神症状の2週間以内の発症、②情動的混乱、困惑及び記憶の錯乱、緊張病症状(昏迷、無動、拒絶、無言、カタレプシー、興奮、反響言語などの特徴的症状)または幻覚妄想、③予後が良い(3か月以内に病前の機能へおよそ改善する)特徴を持ち、自己免疫性脳炎の症状や経過と酷似する。岡山大学、岡山県精神科医療センターにて過去に抗NMDAR抗体検査を行った患者約200名の臨床症状を用い、非定型精神病の診断基準を満たすかどうかを調査し、併せて抗NMDAR抗体の有無、MRI、脳波などの検査所見などを調査した。非定型精神病の診断基準を満たすものは抗NMDAR抗体の保有率が高い。患者にとって髄液検査は侵襲性の高い検査であるため、非定型精神病の診断基準を満たすことに加え、MRI、脳波などの検査所見で異常を認める場合に積極的に髄液検査を行っていくことがスクリーニングに必要であると思われる。 (基礎的検討)ラットプライマリカルチャーニューロンを用いて、抗NMDAR抗体によるグルタミン酸伝達障害が神経発達(神経突起伸長、中心体機能、樹状突起形成)に不可逆な障害を引き起こすことを発見した。慢性的な経過をたどる精神疾患では、慢性的に抗NMDAR抗体に暴露され、抗NMDAR抗体が陽性である場合は積極的に陰転化を目指した免疫療法を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(臨床的検討)「非定型精神病」に着目し、統合失調症、気分障害、てんかんという既存の診断基準を超えた、新しいディメンショナルな診断概念を用いることで、抗NMDAR抗体の陽性者を推測できることを発見した。加えて、岡山県精神科医療センターの症例を加えることで、研究の質量の向上を予定通り行うことができた。更に、脳波、MRI所見など所見を臨床症状の特徴と組み合わせて、統計解析を加えることで髄液検査を施行できない患者も多い精神疾患患者において抗NMDAR抗体脳炎の診断を疑う根拠を得ることを目的とする。現在論文作成中で本年度中には英文誌にアクセプトを目指す。加えて、抗DRD2抗体に加え、市販の抗体検査キットを用いた抗LGI1抗体、抗CASPR2抗体、抗AMPA抗体、抗DPPX抗体、抗GABAB抗体の測定も開始した。このキットでは抗NMDAR抗体も測定でき、抗NMDAR抗体検査の感度特異度の問題が指摘されていること、精神症状のみの患者では抗NMDAR抗体価が低いことも指摘されており、市販キット検査と我々が行っているCBA法の抗体検査を組み合わせて行い比較することで、偽陽性、偽陰性を減らしていく試みが次年度の課題となるだろう。今年度末、陽性者が立て続けに見つかった。ウイルス感染が血液脳関門の脆弱性を引き起こす点で誘因として関係しているため、全世界のコロナウイルス蔓延の影響もあるのかもしれない。 (基礎的検討)ラットプライマリカルチャーニューロンを用いて、抗NMDAR抗体によるグルタミン酸伝達障害が神経発達(神経突起伸長、中心体機能、樹状突起形成)に不可逆な障害を引き起こすことを発見し、論文化がほぼ終了した。この点は順調に研究が進んでいると考えられる。次年度以降のin vivoの研究を行うにあたっての準備としても整えることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(臨床的検討)「非定型精神病」の概念で精神疾患を再分類した岡山大学、岡山県精神科医療センターでのデーターをまとめ約200名の、臨床データー、検査データーの収集解析が終了したため、R3年度中にデーターをまとめ、国際学会での発表、一流英文誌に論文受理を目指す。併せて、抗NMDAR脳炎の発生頻度に年度によって差がある可能性があり、これは他の研究者も気が付いているが、全く検討されていない。今後、本研究の神経内科領域の第一人者である新潟大学の田中惠子先生との共同研究とすることも含めて調査を 行う。抗NMDAR抗体検査の感度特異度の問題が指摘されていること、精神症状のみの患者では抗NMDAR抗体価が低いことも指摘されており、市販キット検査と我々が行っているCBA法の抗体検査を組み合わせて行い比較することで、精神疾患の発症に関与するとされる神経伝達物質に応じたディメンジョナルアプローチをすすめていく。 (基礎的検討)ラットプライマリーカルチャーニューロンを用いた検討で、抗NMDAR抗体によるグルタミン酸神経障害が神経発達に不可逆な障害を引き起こすことが証明できた。これをR3年度中には、国際学会での発表とともに一流英文誌に論文化することを目標とする。あわせて、このin vitroでの論理的根拠をもとに、in vivoでマウスをつかったin uteroテクニックを用いて、神経発達に与える影響を検討し、抗NMDAR脳炎モデル動物の作成を行い、覚せい剤やストレス負荷などを加えることで、精神疾患の発症に関わる脆弱性の検討、向精神病、抗免疫療法などを用いた治療薬の有効性を検討し、最終年の行動実験に繋げていく。
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Causes of Carryover |
僅かに今年度使用予定額に達しなかったものの、研究は概ね順調に遂行している。次年度に繰り越した約3,000円については、消耗品に使用する予定である。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] The relationship between plasma clozapine concentration and clinical outcome: a cross-sectional study.2021
Author(s)
Yada Y, Kitagawa K, Sakamoto S, Ozawa A, Nakada A, Kashiwagi H, Okahisa Y, Takao S, Takaki M, Kishi Y, Yamada N.
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Journal Title
Acta Psychiatr Scand.
Volume: 143
Pages: 227-237
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Electroconvulsive Therapy Is Effective and Safe for Serious Catatonia-Related Ileus: Two Case Reports2020
Author(s)
Yuto Yamada, Masaki Fujiwara, Ryuhei So, Satoru Edahiro, Yukiko Matsui, Shinji Sakamoto, Kiyohiro Kawada, Manabu Takaki, Suguru Ishizu, Keiko Kanazawa, Yoshiki Kishi, Norihito Yamada
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Journal Title
J ECT.
Volume: 36(4)
Pages: e49-e51
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 慢性統合失調症患者におけるアリピプラゾール単剤治療への切替方法についての検討(多施設コホート研究)2020
Author(s)
大林芳明, 光井 聡,酒本真次,皆尾 望, 吉村文太, 耕野敏樹, 矢田勇慈, 岡久祐子, 高尾総司, 来住由樹, 武田俊彦, 髙木 学, 山田了士
Organizer
第116回日本精神神経学会学術総会9月28日(月)~30日
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