2020 Fiscal Year Research-status Report
母子分離モデルから紐解く発達障害発症に関わる脳領域
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19K08348
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
太田 健一 香川大学, 医学部, 助教 (50403720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三木 崇範 香川大学, 医学部, 教授 (30274294)
鈴木 辰吾 香川大学, 医学部, 准教授 (50451430)
中村 信嗣 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (30437686)
割田 克彦 鳥取大学, 農学部, 准教授 (40452669)
日下 隆 香川大学, 医学部, 教授 (50274288)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 母子分離 / 攻撃性 / 扁桃体 / チャネルロドプシン / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は2019年度に得られた知見を基に母子分離モデルの攻撃性、特に暴力的な攻撃性(pouncing, upright posture, clinch attack, biting)との相関が強かった扁桃体中心核に焦点を当てて解析を進めた。母子分離モデルに見られたこの部位の過剰な活性状態が暴力的な攻撃を引き起こす直接的な原因となっているかを評価するために、アデノ随伴ウイルスを利用して9週齢のSDラットの扁桃体中心核に光応答性タンパク質(チャネルロドプシン2)を発現させ、同部位の直上に光刺激用のLEDを導入した。チャネルロドプシン2を発現した細胞はLEDの点灯による光刺激で活性化することができ、攻撃行動試験中に片側の扁桃体中心核をLEDで活性化すると刺激時のみに攻撃行動の増加が認められ、その攻撃行動もpouncingやclinch attackのような暴力的なものがほとんどであった。同様に両側を刺激した場合では、片側刺激以上に攻撃行動が惹起され非常に暴力的な攻撃行動が常に確認される状態となった。このような行動は、チャネルロドプシン2の代わりに緑色蛍光タンパク質のみを発現した対照群では認められなかった。これらのことから扁桃体中心核はその活性に伴って攻撃頻度の増加及び暴力的な攻撃行動を引き起こす事が示された。以上の点から母子分離モデルにおける攻撃性の増加は扁桃体全体ではなく亜核の一つである扁桃体中心核の過剰な活性に原因があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度の結果から扁桃体中心核の過剰な活性状態が母子分離の攻撃性・暴力性の原因であることが示され、研究は十分に進展している。しかしこのような扁桃体中心核と攻撃性との直接的な関係性を示した報告はほとんど無いため、正確な結論を出すためにより信頼性の高い結果が必要である。特に扁桃体は別の亜核(特に扁桃体内側核)も攻撃性に関与することが報告されており、今年度の結果が扁桃体の別の亜核の活性と関係なく扁桃体中心核のみに起因していることを追加検証する必要がある。この追加検証は次年度(2021年度)にもまだ行う必要が生じているため進展状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、上記の追加検証を行うのと並行して母子分離モデルの扁桃体中心核と攻撃性との関係を更に追及して解析する。現在、神経活性を利用した光による遺伝子発現制御系を立ち上げている。この制御系によって、特定の行動中に活性化した神経細胞に精度良く遺伝子の発現を行う事ができ蛍光タンパク質等を発現させれば可視化できるようになる。これを利用して母子分離モデルの扁桃体中心核で攻撃性の原因となった神経細胞の特定を目指す。更にその神経細胞が投射する領域も確認できるように設計する予定であるため、母子分離モデルの攻撃性の原因を扁桃体中心核を起点に投射域レベルで解明するつもりである。
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