2021 Fiscal Year Research-status Report
カルパインをターゲットにした悪性中皮腫の新規治療戦略
Project/Area Number |
19K08633
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
田端 千春 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (90432393)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中皮腫 / カルパイン / サイトカイン / 間質性肺炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性中皮腫は石綿・アスベスト曝露に関連して胸膜・腹膜などに発生する予後不良の悪性腫瘍である。現在わが国においてアスベスト使用は禁止されているが、アスベスト曝露数十年後に発生する悪性中皮腫は今後さらに増加傾向を示すことが予想され、わが国にとっては大きな社会的問題である。建造物材料などアスベストは様々なところで使用されており、アスベストを扱う労働者に限らず、労働者の家族、アスベスト工場やアスベストを用いた建物周辺の住民にもアスベスト曝露が認められるために、アスベスト曝露で発生する悪性中皮腫対策は、国民にとっては非常に深刻な問題である。 さらに悪性中皮腫は放射線治療に抵抗性であり、かつ手術困難である症例が多いため、多くの症例は抗がん剤を使用する化学療法の適応となっている。しかしながら、現在の臨床で使用されている有効な抗がん剤はシスプラチン・ペメトレキセド以外の選択肢はほとんどなく、治療法が未だ十分に確立されていない。そのため有効な新規抗がん剤の開発研究は世界的に非常に重要である。 本研究代表者は長年にわたり、間質性肺炎・肺線維症の病態メカニズムの解明と新規治療法の開発研究を施行してきた。その結果、間質性肺炎・肺線維症と炎症性サイトカイン・線化関連サイトカイン・血管新生関連サイトカインやアポトーシスの関連についての研究成果を実証し報告してきた。間質性肺炎・肺線維症の主要な原因細胞のひとつに肺線維芽細胞があるが、その肺線維芽細胞と同様の間葉系細胞である中皮細胞の形質転換によって悪性中皮腫が発症する。そのため研究代表者が現在までに行ってきた間質性肺炎・肺線維症の研究成果を中皮腫研究に発展させて、悪性中皮腫の新規抗がん剤の開発を研究目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者は以前、カルシウム依存性細胞内プロテアーゼであるカルパインを抑制することで間質性肺炎・肺線維症の進行を抑制することを細胞およびマウスを用いた基礎研究で実証している。それらの研究成果を、肺線維芽細胞と同様の間葉系細胞である中皮細胞の形質転換で発症する悪性中皮腫に応用することを考えている。カルパインによる悪性中皮腫細胞の増殖、細胞遊走及びアポトーシスに関する影響を詳細に解明するための基礎研究を現在遂行中であるが、さらなる検証に時間を要するために研究の進捗が遅れている状況である。また胸部悪性腫瘍である肺がんとカルパインの関連の研究も同時並行して施行している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者がこれまでの研究成果は、悪性中皮腫においてカルパインをターゲットにした新規治療法の開発の可能性を示唆している。そして現在までの研究の進捗状況をさらに発展させて、悪性中皮腫の臨床応用可能な治療方法の新規開発研究を目指す。悪性中皮腫細胞を用いた基礎研究をさらに詳細に解析・遂行し、臨床応用を目指している。
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Causes of Carryover |
(理由)すでに購入していた物品などで本年度の研究の遂行が可能であったことと、アポトーシスや細胞増殖抑制研究等に想定以上に時間を要したため、次年度は以下のとおり使用を計画している。 (使用計画)(1)サイトカインなどの定量(Real-time RT-PCRやELISA; IL6, TGF-beta, CTGF, PDGF,VEGFなど (2)免疫染色(alpha-SMA, vimentin, IL6, TGF-betaなど)(3)MTTなどの増殖アッセイ (4)細胞遊走アッセイ (5)アポトーシスアッセイ(6)SCIDマウスに悪性中皮腫細胞を移植するマウスモデルを用いた研究などを計画している。
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