2019 Fiscal Year Research-status Report
免疫プロテアソームの機能異常による自己炎症病態誘導機能の解析
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19K08880
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
佐々木 由紀 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (50454757)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 免疫プロテアソーム / PRAAS / Psmb8 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己炎症症候群は感染や自己免疫応答を伴わず、持続する炎症病態を特徴とする疾病である。所属研究室では自己炎症病態に部分脂肪萎縮症を伴う遺伝性症候群の原因遺伝子として、免疫プロテアソームの構成因子β5iをコードするPSMB8遺伝子のミスセンス変異を同定している。PSMB8ミスセンス変異による免疫プロテアソームの機能破綻によって引き起こされる症候群は、Proteasome-associated autoinflammatory syndromes (PRAAS)と定義されている。本研究ではPSMB8ミスセンス変異が、どのような分子基盤でPRAASの自己炎症応答を誘導しているかについて、病態を詳細に再現した動物モデルを樹立することにより明らかにすること、また本症候群の創薬標的を同定することを目的とする。 PRAAS と同様の変異を持つPsmb8ミスセンス変異ノックインマウス(Psmb8-KI) を樹立し解析を行ったところ、Psmb8-KIマウスはPRAAS由来B細胞と同様にプロテアソーム分子集合が障害され、分子集合中間体が蓄積し、β1i、β2i、β5iの成熟型への変換が障害されていた。しかし、総プロテアソーム活性は野生型マウスと比較して減弱はしていなかった。それは、Psmb8-KIマウス由来細胞では構成型プロテアソーム構成分子β5の発現が野生型マウスと比較して過剰発現しているために、総プロテアソーム活性が補完されているからと考えられた。そこでβ5過剰発現の影響を避け、総プロテアソーム活性が減少しているヒト疾患と同様の特徴をもつマウスモデルの開発が必要であると考えられ、Psmb8-KI でかつマクロファージ系細胞でβ5が欠損するマウスを樹立し、解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Psmb8-KIマウスは炎症病態を自然発症しないことから、イミキモド塗布乾癬様皮膚炎症誘導モデルを用い解析を行ったところ、Psmb8-KIマウスは野生型マウスと比較して炎症発症が早期でかつ増悪した。プロテアソーム阻害剤を作用した細胞、およびイミキモド塗布耳組織の網羅的解析から、Psmb8-KIマウスにおける炎症の惹起、増悪に関与している可能性がある分子X、 Y、Zが示唆された。それぞれの分子の影響を見るために、イミキモド皮膚炎症誘導実験においてそれぞれの分子の阻害抗体、阻害剤を投与し、経時的に炎症スコア、炎症部位の組織化学的解析を検討したところ、いずれも部分的ではあるがPsmb8-KIマウスにおける炎症の惹起、増悪を抑えることが確認された。そこで強制発現細胞株を作成し、機能解析を行うための実験系を確立した。 Psmb8-KIマウス由来細胞では構成型プロテアソーム構成分子β5の発現が野生型マウスと比較して過剰発現しているために、総プロテアソーム活性が補完されているからと考えられた。そこでβ5過剰発現の影響を避け、総プロテアソーム活性が減少しているマウスモデルの開発のために、ES細胞から作成したPsmb5+/-マウス (Psmb5完全欠損マウスは 胎生致死)を用いて、Psmb5+/-Psmb8-KIマウスの樹立を試みたが、胎生致死であるためかマウスは得られなかった。一方、マクロファージ特異的にβ5が欠損するPsmb8-KI Psmb5 flox/flox LyzM cre/+マウスの樹立に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
Psmb8-KIマウスにおける炎症の惹起、増悪に分子X、Y、Zがどのようなメカニズムで影響を及ぼしているのかを調べるために、イミキモド皮膚炎症誘導実験において阻害抗体、阻害剤を投与し、これらのマウスの血清中炎症性サイトカイン、炎症性サイトカイン遺伝子発現、炎症部位浸潤細胞の量・質的変化を検討する。また、Psmb8-KI/Y欠損マウス、Psmb8-KI/Z欠損マウスが樹立済みであり、これらのマウスでもイミキモド乾癬様皮膚炎を誘導させ炎症病態におけるそれぞれの分子の役割を検証する。また、強制発現細胞株用いた実験系で機能解析を行う。 マクロファージのみならず、その他の細胞(樹状細胞、ケラチノサイト等)特異的にPsmb5を欠損させたマウスについても樹立中である。これらのマウスで炎症病態が自然発症するかを経時的に観察し、発症した場合には、病態の自然経過、免疫細胞の活性化、炎症に関わる分子群の定量などを行う。またX、Y、Z分子との関係性を解明するために各欠損マウスと交配する。
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