2019 Fiscal Year Research-status Report
プリオン蛋白質を分子標的としたインフルエンザ重症化の新規治療法の開発
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19K08930
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
千田 淳司 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 助教 (20437651)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プリオン蛋白質 / インフルエンザ / 重症化 / 炎症性サイトカイン / Src / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国ではインフルエンザ罹患患児の重症化による死亡が問題となっているが、その発症機序については不明である。最近、我々はインフルエンザウイルス(IAV)感染マウスへ抗プリオン蛋白質抗体(抗PrP抗体)を腹腔内投与すると、野生型マウスでは致死率の大幅な低下が認められること、PrP遺伝子欠損(KO)マウスではその治療効果が認められないことから、PrPはインフルエンザ重症化の治療標的となると判断した。 コントロールIgG及び抗PrP抗体を前投与したマウスにIAVを経鼻感染した後、両者のマウスの重症度について評価した。その結果、コントロールIgGを投与したマウス肺と比較して抗PrP抗体を投与したマウス肺では、1)炎症性細胞の浸潤が軽度であり、炎症性サイトカイン(IL6,TNFα,IFNγ)の産生量が低値であること、2)ウイルス力価が低く、細胞死が抑制されていることを明確にした。他にも、抗PrP抗体を前投与したIAV感染マウスの肺では、何らかの浸潤性細胞でSrc(Tyrosine protein kinase)のリン酸化が起こることを見出した。マウスへのSrcのリン酸化阻害薬(Dasatinib)と抗体を併用するとその治療効果が消失することから、抗PrP抗体の作動機序にSrcのリン酸化が中心的な役割を果たすものと示唆された。また、この浸潤性細胞は抗PrP抗体を投与したIAV非感染肺では認められないことから、自然免疫系の細胞である可能性が高いと判断した。そこで、抗PrP抗体を投与したIAV感染肺で、Srcリン酸化抗体と各種免疫細胞マーカー(MGL1/2,CD3,MPO,CD19)の抗体を用いた二重免疫組織染色を試みた。その結果、Srcのリン酸化が起こる細胞は、炎症抑制型マクロファージ(M2型MΦ)であることを突き止めた。このM2型MΦのIAVの重症化抑制の詳細な機序について今後解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和元年から令和2年度前半の予定であった、抗PrP抗体の投与でSrcタンパク質のリン酸化が起こる浸潤性細胞が炎症抑制型マクロファージ(M2型MΦ)であることを既に特定した。さらに、令和2年度後半から令和3年度の研究計画であるPrPを分子標的とするリード化合物の探索に関しても、いくつかの候補分子を既に同定している。 従って「当初の計画以上に研究が進展している」ものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、M2型MΦが如何にしてIAVの重症化を抑制するのか、その詳細な機序について解析する。具体的には、M2型MΦが産生する種々の抗炎症性サイトカインのうち、どれがIAVの重症化に効果的であるのか明確にする。また、それを基盤にした新規治療法の開発を試みる。
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Causes of Carryover |
本年度に計画・計上していた細胞培養液を用いた研究を次年度に延期するため、その差額を次年度の消耗品費等に使用する予定である。
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