2019 Fiscal Year Research-status Report
消化管粘膜免疫が左右するバクテリアル・トランスロケーションと全身感染
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19K08961
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
松本 哲哉 国際医療福祉大学, 医学部, 主任教授 (10256688)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バクテリアル・トランスロケーション / プロバイオティクス / 消化管粘膜免疫 / 全身感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はどのようにプロバイオティクスが消化管粘膜免疫に作用し、さらに全身感染に発展させる要因について検討することを目的としている。バクテリアル・トランスロケーション(bacterial translocation, 以下BT)は腸管内に生息する菌が腸管組織に侵入し、血行性、あるいはリンパ行性に他臓器に移行する現象であり、免疫不全患者においては菌血症や敗血症の誘因となっている。これまでの研究において、プロバイオティクスやラクトフェリン等を活用することで腸内細菌をコントロールし、BTを抑制する可能性が示唆された。乳酸菌などに代表されるプロバイオティクスは消化管の粘膜免疫に対して影響を与えることが示されてきた。私達は実際に市販の食品に利用されているBifidobacterium longum BB536株をマウスに経口的に投与することで,内因性の緑膿菌敗血症を有意に抑制することを証明している。その機序については,乳酸や酪酸などの関与が示唆された。さらにマウスにとって病原性の強いSalmonella enterica Serovar Typhimuriumを用いた実験では、Lactobacillus plantarum b240株の投与でBTを抑制し、マウスの致死的感染を抑制することが推定されている。 しかし、その一方で一部のプロバイオティクス株はむしろ全身感染を増悪させ、その病態に粘膜免疫が関与していることが示唆された。その機序としては、プロバイオティクスによる免疫の活性化がさらに全身の炎症反応を引き起こし、それに伴ってサイトカイン・ストームに近い状態に誘導している可能性が示唆された。プロバイオティクスといっても生体側への作用が大きく異なることから、何が原因でこのような現象が導かれるのかについては、解明が必要な内容と考えられる。ただし、その病態については、詳細な解析に至っておらず、さらに引き続き検討を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、臨床面で対応すべきことが急に増加し、予定されていたスケジュールで研究を進めることが困難となった。
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Strategy for Future Research Activity |
全身感染を増悪させる作用を示したプロバイオティクス株を用いて、消化管粘膜免疫の活性化が負の方向に感染を導く可能性を考慮して、引きつづきマウスを用いた動物実験を中心に機序の解明を進めていく予定である。具体的には1)プロバイオティクス菌株間による作用の違いの確認、2)消化管粘膜免疫を活性化させるプロバイオティクス等の因子の解明、3)BTから全身感染に進展する上での消化管粘膜免疫の関与、を重点的に検討を行う予定である。
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Research Products
(6 results)