2019 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism of Donor MHC Specific Tolerance Induction and Maintenance
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19K09107
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
辻 昭一郎 東邦大学, 医学部, 非常勤研究生 (70726736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 卓 東邦大学, 医学部, 准教授 (40385563)
田中 ゆり子 東邦大学, 医学部, 講師 (40396685)
近藤 元就 東邦大学, 医学部, 教授 (20594344)
羽賀 博典 京都大学, 医学研究科, 教授 (10252462)
上本 伸二 京都大学, 医学研究科, 教授 (40252449)
加藤 悠太郎 藤田医科大学, 医学部, 教授 (70265833)
犬飼 美智子 藤田医科大学, 医学研究科, 大学院生 (00839186)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 免疫寛容 / 移植 / マウス / アデノ関連ウイルス / 制御性T細胞 / リンパ球キメラ / PD-1 / IDO産生細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のためには、マウス肝蔵の同種移植で、安定した長期生存が可能となる技術の確立が必要であるが、2つの問題があった。まず2系統のマウスをドナーとレシピエントに用いるため、どちらかでBalb/cなどの組織が脆弱なマウスを扱う必要があった。これに対しては、肝臓の牽引や脱転に工夫が必要であったが、その技術的問題を克服した。2つ目として本研究では移植後に長期生存が必要である。短期生存が可能な技術から安定した長期生存が可能な技術に昇華させることは非常に困難であるが、灌流やカフテクニックに工夫を行い、100日以上の生存が可能となった。 マウス肝移植は全身麻酔下で同所肝移植を行った。肝上大静脈は連続縫合を行い、門脈、肝下大静脈はカフを用いて、また胆管はステントを用いて吻合した。これまでのマウス肝移植の研究では動脈吻合は行われていなかったが、胆管は動脈支配であるため、動脈吻合の必要性を評価する必要があったが、両群を比較しても、生存期間や拒絶の有無等に違いはなく、マウスの肝移植では動脈吻合は必須ではないと考えられた。動脈吻合は手技的に煩雑であり、個体間の動脈のバリエーションも大きいため、本研究では動脈吻合を行わない方がよいと考えられた。 次にH2-Kd(MHC Class I)を肝臓特異的に発現させるAAVウイルスベクターを作成するためのAAVプラスミドの作成を行った。AAVプラスミドは市販のAAVプラスミドを種々のプロモーターとエンハンサーの組み合わせで置換し、マルチプルクローニングサイトにGFPを挿入して、その発現量と組織特異性を確認した。Balb/cのH2-Kdは1107bpであるので、核酸合成にて作成した。これらにより次年度への準備は順調に行われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が4月に異動したため、セットアップに時間が必要であった。異動後すぐに器機の購入手続き、動物実験のプロトコールおよび遺伝子組み換え実験のプロトコールの申請を行ったが、実験の開始は9月になってからであった。また研究環境が変わったため、マウスの肝移植ができるように環境調整するのに更に3か月が必要であった。更に2月に研究代表者の近傍でコロナウイルスに対する感染者を認めたため、その後研究が停止した。以上より昨年度は実質1か月半程しか研究ができなかったため、研究計画に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫寛容の成立を確認するために必要である、C57BL/6マウスのH2-KbをH2-Kdでノックインしたマウス(B6.Kdマウス)を作成する。 次にC57BL/6にAAVウイルスベクターにて肝臓特異的にH2-Kdを発現させ、B6.Kdマウス、Balb/cマウスと共に肝臓でのH2-Kdの発現量を比較検討する。またC57BL/6にBalb/cの肝臓を同所移植した時の、肝臓でのH2-Kdの発現量の経時的変化を測定する。H2-Kdの発現量と免疫寛容の強さや導入までの時間などとの相関を検討する。 外来MHCの肝臓への導入により肝障害が誘導されるかどうかを検討するために、MHCの異なる同所肝移植を行うと肝臓が拒絶されるPD-L1ノックアウトマウス(C57BL/6バックグラウンド)にH2-Kdを肝臓特異的に発現させ、肝障害誘導の有無を検討する。 更にC57BL/6に肝臓特異的にH2-Kdを発現させた後、C57BL/6マウスの肝臓を同所移植することにより、肝臓にH2-Kdの発現がなくても、H2-Kdに対する免疫寛容が維持されるかどうかを確認する。 免疫寛容維持における制御性T細胞(Treg)、PD-1/PD-L1シグナル、IDO産生細胞の役割を解明するために、免疫寛容導入後に抗CD25抗体でTregを除去しても免疫寛容が維持されるか、また抗PD-L1抗体あるいは1-methyl-tryptophanでPD-1/PD-L1シグナルやIDO産生細胞の働きを阻害しても免疫寛容が維持されるかを確認する。 最後に人間の生体肝移植後に免疫抑制剤を中止したにもかかわらず、拒絶がおきない症例をコントロール群と比較検討することにより、臨床における免疫寛容導入の因子を検索する。
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Causes of Carryover |
研究代表者が4月に異動したため、セットアップに時間が必要であった。異動後、器機の購入、動物実験のプロトコールおよび遺伝子組み換え実験のプロトコールの承認が必要であり、実験の開始は9月になってからであった。また2月からは近傍にコロナウイルス感染者を認めたため、研究が停止した。そのため実質研究期間が短かかったため、今年度に使用した額が当初予定より少なくなり、次年度使用額が生じている。しかし、研究の準備は整い、またコロナウイルスによる研究自粛も解除されたため、次年度以降はノックインマウスの作成、遺伝子改変マウスの購入とそれらを用いたマウス肝移植実験、抗体などを用いた阻害実験などに2019年度からの次年度使用分および当初よりの使用予定分の双方を使用する予定である。
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