2020 Fiscal Year Research-status Report
サイクリン依存性キナーゼ5を標的とした糖尿病網膜症治療
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19K09951
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
三田村 佳典 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (30287536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仙波 賢太郎 徳島大学, 病院, 助教 (10745748)
江川 麻理子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (70507657)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 外科 / 細胞・組織 / 生体分子 / 糖尿病 / 臨床 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年に我々は腫瘍増殖などに伴う異常な血管新生や脈絡膜血管新生に関与しているPPARγ (peroxisome proliferator-activated receptor gamma)が糖尿病網膜症の進行にも関与していることを報告した。また、同年のNature誌にサイクリン依存性キナーゼ5(Cdk5: Cyclin-dependent kinase 5)がPPARγの糖尿病誘発作用を促進することが発表され、糖尿病網膜症の進行においてもPPARγがCdk5の制御を受けている可能性が想定できた。今回、硝子体手術で得られる増殖膜と硝子体液を用いてCdk5活性を検索し、増殖糖尿病網膜症においてCdk5の異常な活性化がないか、PPARγ濃度との相関がないかを確認するため本研究を施行した。 硝子体手術時に総計70以上の検体を採取済みで、得られた検体を解析するに当たっては倫理委員会での承認を取得し対象患者からは充分なインフォームドコンセントを得た。黄斑円孔・黄斑上膜(新生血管を含まないコントロール)、増殖糖尿病網膜症の手術時に灌流液を流す前に前房水・硝子体を吸引した後、直ちに-80℃にて保存した。また、黄斑上膜、増殖糖尿病網膜症の増殖膜検体を採取し、免疫染色用検体については直ちにOCT compoundに包埋し凍結させた後、-80℃にて保存した。RT-PCR用の検体についてはトリゾール0.5ccに浸し4℃にて保存した。増殖膜および特発性黄斑上膜の網膜前膜のヒト手術検体からRNAを抽出した後cDNAを合成した。Cdk5およびCdk5の制御因子であるp35に特異的なプライマーを用いた定量的PCR法により、両群におけるCdk5、p35遺伝子発現量を比較検討した。また、両群のヒト手術検体から凍結切片を作成し、蛋白レベルでの発現パターンについてCdk5抗体を用いた免疫染色法により比較した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象である増殖膜と硝子体液の検体は、増殖糖尿病網膜症ならびに黄斑円孔・黄斑上膜(新生血管を含まないコントロール)の硝子体手術時に順調に採取が進んでおり総計70以上の検体を採取済である。また、両群のヒト手術検体から凍結切片を作成し、蛋白レベルでの発現パターンについてCdk5抗体を用いた免疫染色法により比較した。増殖糖尿病網膜症7検体、黄斑上膜5検体について免疫染色を施行したところ、PPARγとCdk5、p35の免疫染色では増殖糖尿病網膜症において対照よりも明らかに強く染色され、fluorescence intensityも有意に高かった。また二重染色を行うとPPARγとCdk5、p35は血管内皮細胞のマーカーであるvon Willebrand factorと二重染色され主に血管内皮細胞に発現していることが確認された。以上の結果は研究の目的と照らし合わせると非常に有望なものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)令和2年度に引き続き、硝子体切除開始時に灌流液を流す前に硝子体カッターにて硝子体液を採取する。白内障手術併用時には白内障手術の前に前房水を採取する。採取した前房水・硝子体液検体はすぐに-80℃にて保存する。 2)増殖膜および特発性黄斑上膜の網膜前膜(新生血管を含まないコントロール)のヒト手術検体について、Cdk 5、p35、p20(p35の分解産物)タンパク質の発現量をWestern blotting法により確認する。また、同時に硝子体手術にて採取した硝子体液や前房水について、ヒストンH1を用いてCdk5活性を測定するとともにPPARγ濃度も測定し両者に相関がないかを確認する。また、最近、眼科領域にて抗VEGF抗体による治療が盛んに行われており、増殖糖尿病網膜症手術前に抗VEGF抗体を硝子体内注射し、増殖糖尿病網膜症の活動性を低下させることがある。この抗VEGF療法後の眼内のPPARγ濃度、Cdk5活性の変化についても解析を行う。
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Research Products
(1 results)