2020 Fiscal Year Research-status Report
エクソソームを細胞間コミュニケーションツールとする創傷治癒機構の解明
Project/Area Number |
19K10038
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
下仲 基之 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 教授 (30277272)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エクソソーム / 内皮細胞 / 線維芽細胞 / 創傷治癒 / 灌流培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
創傷治癒過程の制御は,細胞外マトリックスや血液中の成分,そして線維芽細胞と血管構成細胞との間の多次元的な相互作用に加え,エクソソームのタンパク質やmiRNAによるタンパク質発現制御などが重要な役割を担っていると考えられる。本研究は,皮膚線維芽細胞の3D培養に血管内皮細胞の2D培養を組み合わせた灌流培養を行うことでex vivoの創傷治癒モデル系を確立して細胞間の相互作用を解析するとともに,それぞれの細胞から分泌されるエクソソームの損傷回復に及ぼす影響を検討することで,エクソソームの新たな生理機能を探索し,in vivoにおける創傷治癒過程のメカニズム解明を目指すものである。 今年度は,実験計画に示した皮膚線維芽細胞と血管内皮細胞との二成分灌流培養系の確立を行なった上で,両細胞間の相互作用を解明することを目的に研究を行なった。血管内皮細胞及び皮膚線維芽細胞を直列に接続した上で灌流培養を行い,上流の細胞由来のエクソソームが下流の細胞の損傷修復に与える影響をスクラッチアッセイにより検討した。その結果,血管内皮細胞由来のエクソソーム及び皮膚線維芽細胞由来のエクソソームは,どちらも両細胞に対する損傷修復促進能を有することが明らかとなった。さらに,上流の細胞に損傷を与えた場合と与えない場合とで下流の細胞の損傷修復に及ぼす効果が異なることを見出した。 以上のように今年度は,二成分の灌流培養を用いて創傷治癒過程における血管内皮細胞と皮膚線維芽細胞の相互作用を明らかにすることに成功した。次年度は,この系及びこの系に3D培養を組み合わせた系を用いてそれぞれの細胞由来のエクソソームの影響を詳細に検討するとともに,エクソソーム由来のmiRNAのスクリーニングを行うことで,その作用発現のメカニズムの解明を試みていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,教育活動に大きな負荷が加わるとともに研究活動に大きな制約が生じため,十分な研究時間を確保できなかったことが最大の原因である。今年度の目標は,血管内皮細胞及び皮膚線維芽細胞を直列につないだ二成分系灌流培養系を構築した上で,線維芽細胞の3D培養装置の上流に内皮細胞の2D培養装置を直列に接続した3D/2D二成分灌流培養系を構築することであったが,前者については成功したものの,後者については現在条件を詳細に検討している段階である。 前年度に確立した各細胞の灌流培養系に準じた条件で,二成分灌流培養系の構築を行った。上流と下流の細胞の組み合わせは,内皮細胞→内皮細胞,内皮細胞→線維芽細胞,線維芽細胞→線維芽細胞,線維芽細胞→内皮細胞,の4通りである。これらの組み合わせにおいて下流の細胞に損傷を与え修復するまでの様子を観察したところ,単独で灌流培養した時に比べ上流に細胞を共存させた場合の方が短時間で修復が完了することがわかった。これが上流の細胞のエクソソームによる効果であるかを調べるため,両細胞間にエクソソームをトラップするフィルターを設置し同条件で損傷修復過程を観察したところ,フィルターがない時に比べて修復時間が増加した。 続いて,上流側の細胞の状態に依存したエクソソームの効果を調べるため,上流側の細胞に損傷を与えた上で灌流培養を行った。その結果,線維芽細胞については損傷の有無に関わらず下流の細胞の修復速度は変化しなかったが,内皮細胞については損傷があると下流の線維芽細胞の損傷修復が遅れることが明らかとなった。このことから,内皮細胞は損傷の有無によって異なる成分のエクソソームを分泌していることが示唆された。 次年度は,早急に3D/2D二成分灌流培養系を確立した上で,目標達成に向けて研究を推進していく所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今年度得られた結果をもとに,コラーゲン担体に皮膚線維芽細胞を播種した3D培養体に血管内皮細胞の2D培養系を組み合わせて灌流培養を行う創傷治癒のex vivoモデル培養系を構築し,その系を用いて両細胞間の相互作用を評価するとともに,培養系に存在するエクソソームが細胞増殖の制御や細胞外マトリックスの合成・分解等にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることで,瘢痕形成に重要な影響を与える過程である細胞増殖期と組織再構築期における細胞間コミュニケーションの動的変化を解析する。 具体的には,今年度確立した二成分系灌流培養系に加え,皮膚線維芽細胞の3D培養装置の上流に血管内皮細胞の2D培養装置を直列に接続した3D/2D二成分灌流培養系を構築する。これら二種類の培養系において上流側の血管内皮細胞に損傷を与え,血管内皮細胞が損傷から回復する過程に応じて皮膚線維芽細胞の増殖能や遊走能,プロテアーゼの合成・分泌量,マトリックス成分の蓄積,細胞内シグナル伝達因子の発現パターン等がどのように変化するかを検討する。ここで現れた変化に対するエクソソームの関与を明らかにするために,構築した二成分の灌流培養の流路内にエクソソームを吸着させるトラップを設置してそれぞれの細胞から分泌されたエクソソームを回収し,それらのエクソソームに存在するmiRNAの解析を行う。 解析したmiRNAの標的となる分子を特定し,それらの発現量の変化について検討することで,miRNAと標的タンパク質との相互作用について検討する。得られた解析結果をもとに候補となるmiRNAを選択し,二成分の灌流培養にそれらのmiRNAを添加して皮膚線維芽細胞に対しどのような影響を及ぼすかを検討することで,エクソソームに存在するmiRNAの役割を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
消耗品購入費の端数(46円)であり,差額分は次年度の予算と合わせて執行する予定である。
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Research Products
(1 results)