2020 Fiscal Year Research-status Report
JAK/STATシグナル制御を標的としたシェーグレン症候群の新規治療戦略
Project/Area Number |
19K10311
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
青田 桂子 徳島大学, 病院, 准教授 (70437391)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | シェーグレン症候群 / ケモカイン / JAK/STATシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫学的指定難病であるシェーグレン症候群(SS)唾液腺では、導管細胞からのケモカインCXCL10過剰産生とそのレセプターであるCXCR3+炎症性細胞が集簇し、病態を形成することが明らかになっている。申請者は先行研究で、CXCL10は主にIFN-γ刺激によりJAK/STATシグナルを介して導管細胞から産生されることを報告した。本研究では、関節リウマチ薬であるJAK1/2 選択的阻害薬バリシチニブを用い、JAK/STATシグナル制御が唾液腺の炎症病態形成に及ぼす影響を解明し、SS新規治療薬としてのJAK阻害薬の可能性について検討した。 【研究の方法】SS患者および健常者より採取した口唇腺を用いてJAK1、JAK2、リン酸化JAK1、リン酸化JAK2の発現を免疫組織化学染色法にて検索した。正常ヒト唾液腺導管細胞株を用いて、バリシチニブがIFN-γ誘導性CXCL10発現に及ぼす影響をRT-qPCR、ELISAおよびWestern Blot法にて解析した。さらにバリシチニブがIFN-γ刺激導管細胞株へのJurkat T細胞の走化性に及ぼす影響をmigration assayにて検索した。 【結果】SS患者口唇腺においてJAK1、リン酸化JAK1、リン酸化JAK2は導管に強く発現していた。また、JAK2およびリン酸化JAK2は導管周囲の炎症性免疫細胞に強く発現していた。バリシチニブは導管細胞株においてIFN-γにJAK/STATシグナルを抑制し、CXCL10 mRNAおよび蛋白質発現を有意に低下させた。さらにバリシチニブはT細胞の導管細胞への走化性を有意に抑制した。 【結論】バリシチニブは唾液腺導管細胞においてIFN-γ誘導性CXCL10発現を抑制し、炎症性免疫細胞のリクルートを抑制することが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SS患者および健常者の口唇腺を用いた免疫組織化学染色法による解析では、JAK1、JAK2はSS患者および健常者の両方の口唇腺に発現し、SS患者口唇腺の導管ではリン酸化JAK1、リン酸化JAK2が健常者口唇腺と比較して強く発現していることが明らかになった。このことは、JAK1/2選択的阻害薬であるバリシチニブがSS治療薬としての可能性を持つことを示している。唾液腺細胞株を用いたin vitro研究で、唾液腺導管細胞ではバリシチニブはIFN-γ誘導性CXCL10産生を有意に抑制することが明らかになった。さらに、バリシチニブが唾液腺導管細胞においてCXCL10産生を抑制することにより炎症性細胞浸潤を制御することを証明した。 本研究はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、唾液腺細胞株を用いたin vitro研究で、唾液腺導管細胞ではバリシチニブはIFN-γ誘導性CXCL10産生を有意に抑制することを明らかにした。さらに、バリシチニブが唾液腺導管細胞においてCXCL10産生を抑制することにより炎症性細胞浸潤を制御することを証明した。この結果は、バリシチニブがSSの有効な新規治療薬になりうる可能性を示唆している。今後は、SS患者初代培養細胞を用いてバリシチニブの有効性を検証する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で学会がなくなったため、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した研究費とあわせて、初代培養細胞を用いたバリシチニブの有効性に関する研究に使用予定である。
|
Research Products
(2 results)