2020 Fiscal Year Research-status Report
模擬患者を活用したシミュレーション教育によるシームレスな医療安全教育アプローチ
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19K10512
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
甲斐 由紀子 宮崎大学, 医学部, 教授 (70621803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舩元 太郎 宮崎大学, 医学部, 講師 (20404452)
山本 恵美子 愛知医科大学, 看護学部, 准教授 (50464128)
綾部 貴典 宮崎大学, 医学部, 准教授 (70295202)
竹山 ゆみ子 宮崎大学, 医学部, 講師 (90369075)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒヤリ・ハット体験 / 卒前・卒後のシームレスな医療安全教育 / コンピテンシー / 自記式質問紙調査 / 臨床実習 / 初期研修 / 医学生 / 初期研修医 |
Outline of Annual Research Achievements |
医学部卒業後、2020年3月に医師免許を取得した研修医24名を対象に、研修医がA大学医学部附属病院・関連病院で行う研修の「ヒヤリ・ハット体験」(以下、体験)を調査し、2019年に実施した卒前の医学科6年生61名の調査結果(体験・体験場面・体験内容・今後の対処等)と比較した。 研修医は診療行為が増加すると考え、医学生版質問紙に診療行為の自由記載欄を追加した。また、コロナ禍の感染防止対策に準じ、留置き法ではなく、Google formを用いた無記名の質問紙調査に変更した。 研修医24名中23名(回収率95.7%、有効回答率100%)より回収した。体験は、研修医はほぼ全員、医学生は8割であった。χ2検定の結果、研修医は、患者に侵襲を及ぼす診療に関して優位にヒヤリ・ハットを認めた。背景には、指導医不在や学習不足の中、不慣れな医療行為に対する焦り・緊張・不注意があった。一方、医学生の原因は、7割が自己判断・自己解釈・思い込みであった。研修医・医学生とも最多の対処は、医療行為を実施する前・中・後の確認であった。研修医の4割が、学生時代より体験が増えたと回答した。この結果は、研修医が自らの診療を振り返り、未熟さを自覚し、安全のために積極的にリスクを発見しようと認識していた結果である。 医師資格を取得して1年未満の研修医は、日常を振り返り体験を可視化し自己分析する中で、危険を予知する高いアンテナを育み体験を可視化していた。研修医は、医師の経験が浅く、知識・経験不足により誤った判断をしやすくエラーを生じやすいことを上級医や看護師などスタッフが十分理解し、研修医を支援・教育していく環境づくりが必要である。医療者は相互連携しながら、教えあい聞きあえる人間関係を作り、研修医が組織内システム(研修、報告、連絡、チーム連携など)に精通し、自ら気づいて躊躇なく行動できるよう導く実践的教育が重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
医学部卒業後、2020年3月に医師免許を取得した研修医の臨床研修は、コロナ禍にあり、当初、研修受入れ自体が制限されたり遅延した。卒後臨床研修担当者と連携しながら研修医の初期研修の実態を確認した結果、通年と同様の研修が実施された時期を見極めた上で調査を開始する方針へ変更した。したがって、当初のヒヤリ・ハット体験の調査期間が予定より大幅に遅れ、2020年11月17日~12月22日に実施した。 コロナ禍における感染防止対策に準じ、当初の「留置き法による無記名の質問紙調査」ではなく、「Google formを用いた無記名の質問紙調査」への変更が余儀なくされた。最終的に、研修医には、調査協力の説明と同意文書取得以外に、調査時にメールアドレスを使用することの同意について説明文書を新規作成し同意を得る方針とした。その結果、対象者24名中23名から同意が得られ、23名から回収(回収率95.7%、有効回答率100%)して調査を実施した。その余波を受け、2020年度の調査結果と2019年度の調査結果との比較・分析が2021年度まで遅延した。 医療の質・安全学会(日本)では、2019年度の研究結果について発表できたが、臨床安全世界学会の学会が中止となり研究成果について発表・投稿できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、コロナ禍で、研究計画が遅延していた内容を加え、以下を実施する。 (1)医療の質・安全学会で、2020年度の研究成果を発表する (2)臨床安全世界学会で、2019年度および2020年度の研究成果を発表し論文投稿する (3)2019年度および2020年度の解析結果を基に、研究代表者らが医学生を対象にリスク感性を育てる目的で開発した「教育用電子カルテを利用した医療安全教育」に準じ、個人情報のみ加工した実事例を土台に、医学生が卒前から的確な状況認識と医療安全マインドを修得するための知識・洞察力・表現力を育成し、コンピテンシーを備えた実践的学びができるプログラム試案を作成する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍における「留置き法による質問紙調査」が、「Google formを用いた無記名の質問紙調査」になり、調査関連費用が縮小された。また、コロナ禍における感染防止対策に準じ、医療の質・安全学会がWeb開催となり、渡航制限の結果、臨床安全世界学会が中止となり学会発表および論文投稿も中止となった。 したがって、2020年度「Google formを用いた無記名の質問紙調査」の研究成果については、医療の質・安全学会(日本)で発表する。また、2019年度および2020年度の2年分の研究結果については、臨床安全世界学会で学会発表し論文投稿する。
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Research Products
(1 results)