2020 Fiscal Year Research-status Report
マイクロプラスチック摂取が糖尿病モデル水棲生物の合併症と生殖機能に及ぼす影響
Project/Area Number |
19K10606
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
苣田 慎一 杏林大学, 医学部, 学内講師 (90639791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 正雄 杏林大学, 医学部, 准教授 (10296543)
苅田 香苗 杏林大学, 医学部, 教授 (40224711)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マイクロプラスチック / メダカ / 最低毒性量 / ポリエチレンビーズ / 産卵数 / 眼病変 / 腎病変 / 成長率 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、MPが生体毒性作用をもつだけでなく、さらに最小毒性量等の閾値があると仮定し、水棲モデル生物であるメダカを用いて実験的に検証した。すなわち、一般水系環境中で存在し得る5段階の濃度(0.009、0.032、0.065、0.32、0.65 mg-MPs/L)で12週間曝露し、成長、生殖能力、経口摂取されたMPの消化管における滞留時間、および腎や眼への影響を評価した。実験の結果、産卵数の減少(およそ50%減少)と眼病変(網膜神経繊維層の菲薄化及び網膜毛細血管の拡張)は0.032 mg-MPs/L以上曝露された群で観察され、ふ化率の減少(およそ30%減少)と腎病変(メサンギウム基質の増生及び糸球体毛細血管の拡張等)は0.065 mg-MPs/L以上曝露された群で観察された。また成長率は最も高い濃度の0.65 mg-MPs/L曝露された群でのみ減少した(およそ10%減少)。各項目で影響が観察された最低濃度を比較すると、MP曝露への感受性は産卵数と網膜影響が最も高く、ふ化率と腎影響、成長率の順に感受性が低くなることが分かった。組織病変が観察された濃度では、酸化ストレス指標の増加が認められたことから、MPの生体影響には酸化ストレスバランスの崩壊が関与していると示唆された。組織学的解析において、組織病変が観察された周囲にMPは観察されず、また、今回の解析項目に関して、0.009 mg-MPs/L群では生体影響は観察されなかった。結論として、MPは間接的に生体組織の酸化ストレスバランスに影響を与え、多種の悪影響や病変を及ぼし得ること、また、それぞれ最小毒性量となる閾値が存在することが本研究により示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、メダカを用いたマイクロプラスチックビーズ(MP)摂取による生体毒性の特徴、および最低毒性量の同定につながるデータについて論文と学会で報告した。引き続き、生体毒性メカニズムの解明として、MPから生体に漏出する成分の解析を進めている。また、糖尿病合併症へのMPの影響を調べるために、血管をGFP標識した糖尿病メダカを作製した。引き続き飼育し、今後曝露実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究に関わる実験は、長期間(12週間~30週間)の飼育を必要とする。従って、研究を推進するために、より効率的に試験を行うためのスケジュール管理を徹底する。また、MPから生体に漏出する成分の詳細な解析のため、予定していた旅費の一部を解析費に追加する。
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Causes of Carryover |
2020年度はおおむね順調に研究をすすめ、研究費を使用した。しかし、4-6月のコロナウィルスによる活動自粛により、出張、学会に係る費用がなくなった。次年度も活動自粛により当初の研究活動から変更する可能性はあるため、その場合、解析に係る外注費や論文等発表にかかる費用に使用する。
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Research Products
(4 results)