2020 Fiscal Year Research-status Report
DNAメチル化に着眼した母体高血糖によるエピゲノム記憶の解析と先制医療への応用
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19K11642
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 直市 九州大学, 大学病院, 助教 (70419547)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | DoHAD仮説 / 母体高血糖 / 網羅的DNAメチル化解析 / エピゲノム記憶 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はエピゲノム修飾の一つであるDNAメチル化に着眼し、母体の栄養・代謝障害のひとつである高血糖が出生児における成人後の肥満や糖尿病への易罹患性をきたす分子機序を解明することである。本研究では妊娠マウスにStreptozotocin(STZ)を用いて糖尿病を誘導し、出生仔の表現型の解析を行った。STZ糖尿病母体よりの出生仔はコントロールマウスよりの出生仔と比し、出生後28日までの低体重が認められた。現在耐糖能異常や肥満に対する感受性など長期的な代謝表現型を検討し、子宮内環境としての母体高血糖が出生児の疾患発症に及ぼす影響を検討している。 また表現型の機序についての検討を行うため胎生期18.5日から出生後28日までの4時点において肝臓を採取し、マイクロアレイによる遺伝子発現プロファル解析とPBAT法による全ゲノムレベルでのメチローム解析を行った。コントロールマウスからの産仔における解析では出生前後の肝臓においてはDNAメチル化と遺伝子発現の変化がみられ、特に乳仔期においてその変化は顕著であった。またDNAメチル化の変化を制御するHNF4α、PPARα、SREBP、CNNB1などの複数の転写因子を同定することができた。現在STZ糖尿病母体マウスからの産仔についても同様の解析を行っており、母体高血糖が出生前後の代謝臓器との機能成熟におよぼす影響や、その機序としての出生仔のDNAメチル化 の変化、遺伝子発現の変化を検討している。STZ母体よりの出生仔とコントロール仔との比較では脂質・コレステロール代謝に関連する遺伝子群、DNAメチル化やクロマチン制御に関与する遺伝子群における発現の差異を認めており、表現型を説明しうる遺伝子群についても解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により出生前後の肝臓における肝臓の遺伝子発現、DNAメチル化の変化についての網羅的解析結果からのクラスター解析やその制御因子の解析を行うことができた。コントロールの出生仔に比してSTZ糖尿病母体マウスからの出生仔において遺伝子発現やDNAメチル化が変化している遺伝子群も同定しており、表現型との関連についての解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
PBAT解析やマイクロアレイにより胎生期18.5日から出生後28日における肝臓においてDNAメチル化と協調して遺伝子発現が変化し、特に乳仔期における劇的な変化を確認した。データベース解析によるこれらの変化をきたす制御因子についても複数同定済であり、これらの制御因子が出生前後のDNAメチル化に及ぼす影響の機能的解析を、マウスを用いて進めている。転写因子と相互作用するエピゲノム制御因子をChIP-MS法によりすでに複数同定しており、出生前後のDNAメチル化の変化が成立する機序を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度においては網羅的遺伝子発現、メチローム解析を用いた出生前後の代謝臓器としての肝臓の機能成熟の機序について検討した。次年度においては同定した制御因子がDNAメチル化に及ぼす影響の機能解析をマウスモデルにて行い、同時に制御因子と結合するDNAメチル化関連タンパクの機能解析を行う。
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Research Products
(1 results)