2021 Fiscal Year Research-status Report
DNAメチル化に着眼した母体高血糖によるエピゲノム記憶の解析と先制医療への応用
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19K11642
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 直市 九州大学, 大学病院, 助教 (70419547)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | DOHAD仮説 / 母体高血糖 / エピゲノム記憶 / 網羅的DNAメチル化解析 / 転写(共役)因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
出生前後の肝臓は一連の栄養環境の変化と併行し、造血臓器から代謝臓器に機能成熟する。また受精以後の様々な母体環境要因が、エピゲノム変化としてゲノム上に記憶され、成人期まで維持されることにより健康・疾患発症に関連すると考えられている。本研究ではDNAメチル化に焦点をあて出生仔の代謝表現型に及ぼす母体高血糖の影響とその機序を解析した。 ストレプトゾトシンにより高血糖を誘導した母体からの出生仔は低出生体重を呈するが、出生2日目から16日目にかけて肝臓においてクロマチン凝集やDNAメチル化に関連する遺伝子群の発現が対照仔マウスと比し有意に変化することを網羅的解析により確認した。 本結果から母体高血糖による出生仔の代謝異常にDNAメチル化が関与していることが示唆され、出生前後のマウス肝臓における糖脂質代謝遺伝子の発現とDNAメチル化の変化について網羅的な解析を行った。その結果、出生前後の肝臓では遺伝子発現、DNAメチル化ともに劇的な変化が生じることを見出し、DNA脱メチル化・発現が上昇する遺伝子群の制御因子としてHNF4α,FOXO1, PPARα, SREBP1/2 などの複数の転写因子群を同定した。特にHNF4αは乳仔期のDNA脱メチル化される遺伝子の制御因子として最上位の有意な遺伝子となったが、Spectrometry of Endogenous Protein(RIME)法によりHNF4αの転写複合体の構成分子としてCTCFL、SFPQなどのDNA メチル化とヒストン修飾に関連する蛋白質の同定に成功した。 これらの結果を踏まえ母体高血糖による出生仔の代謝異常における転写因子の関与について生体レベルでの解析を進めたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究により出生前後の肝臓における肝臓の遺伝子発現、DNAメチル化の変化についてクラスター解析やその制御因子の解析を行うことができた。DNAメチル化の制御に関与する複数の糖脂質代謝に関連する転写(共役)因子を同定した。コントロールの出生仔に比してSTZ糖尿病母体マウスからの出生仔において遺伝子発現やDNAメチル化が変化している遺伝子群も同定しており、表現型との関連についての解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
出生前後の肝臓の代謝機能成熟ににおいてHNF4α,FOXO1, PPARα, SREBP1/2 などの複数の転写因子群によるDNAメチル化の変化が重要であることが明らかになった。現在タモキシフェン投与により時期特異的にこれらの遺伝子を肝臓特異的に欠損できるマウスの作製を終了しており、これらの転写因子が乳仔期前後に母体高血糖を介してDNAメチル化形成や代謝機能の成熟に及ぼす影響を生体レベルにて解析する。
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Causes of Carryover |
今後作製したマウスの解析をしていく予定であり、マウスの維持管理費に必要な額として次年度使用額(397,450円)を請求した。
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