2020 Fiscal Year Research-status Report
高脂質食の心疾患予防食としての可能性の追求~脂質の質に注目した検討~
Project/Area Number |
19K11662
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東口 治弘 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (40436358)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高脂質食 / 植物性脂質 / 動物性脂質 / PPARalpha |
Outline of Annual Research Achievements |
心不全は心臓のポンプ機能の低下により全身に必要量の血液を供給できない状態である。心不全状態の心筋細胞では主なエネルギー産生経路が脂質代謝から糖代謝に移行する。糖代謝は脂質代謝と比較しエネルギー産生量が少ないため、不全心ではエネルギー産生量が低下しエネルギー不足がさらに心機能低下を招いている。そのためエネルギー産生量を増加させ、心筋細胞に必要量を供給することが心機能を改善する可能性がある。高脂質食は脂質代謝を再活性化させ、エネルギー産生量を増加させると報告があるが、一方で脂質の質が心血管イベントに影響を与えることが疫学調査で報告されている。本研究では植物性脂質と動物性脂質の違いに注目し高脂質食による心臓への影響を分子レベルで解明し、高脂質食が心臓エネルギー機構の改善を介し、心不全の発症、進展を抑制しうるかを検討することを目的としている。 まず、2種類の高脂質低炭水化物食(高動物性脂質低炭水化物食と高植物性脂質低炭水化物食)を作成した。各高脂質食を与えたマウスを用い、圧負荷心肥大心不全モデルを作成した。圧負荷により誘導される心壁厚の増加が高動物性脂質食で著増し、高植物性脂質食で軽減することを確認した。圧負荷に対する反応の違いの機序解明のため、両高脂質食における脂質組成の差異をリピドミクス解析で検討した。結果、高動物性脂質食で膜リン脂質成分が増加すること、また高植物性脂質食で中性脂肪が増加することを明らかとした。 また各高脂質食間で心臓のPPARalpha活性化に違いがあることを確認している。初年度にPPARalphaの特異的活性化薬が心肥大が抑制されることを確認した。今年度は心臓特異的PPARalphaノックアウトマウスに圧負荷を加えた。ノックマウスは野生型マウスと比較し、心機能の著明な低下を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、血中及び心臓におけるリピドミクス解析を行い、各高脂質食間で脂質組成に差異があることを明らかにした。またPPARalpha特異的活性化薬、心臓特異的PPARalphaノックアウトマウスを用いた実験も行い、結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
リピドミクスにより各高脂質食間で差を認めた脂質を培養心筋細胞に負荷することで、その脂質組成の心筋への影響を検討する。またこれまでの結果により、脂質の違いによる表現系の差異にはPPARalphaが重要であることが示唆されたため、PPARalphaを活性化させる機序の解明を次年度は行う予定である。
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Research Products
(4 results)