2019 Fiscal Year Research-status Report
超球面およびシリンダー上の新たな統計モデルの開発およびその推定に関する研究
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19K11863
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
宮田 庸一 高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (10514250)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 方向統計学 / 非対称分布 / 識別可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究においては、研究目的に記載した、有限混合モデルにおいてコンポーネントは対称なものだけで果たして十分なのだろうか?という問いに対して、一つの研究成果を出すことができた。具体的にいうと、ある地域において交通事故が起こった時刻のデータに対して、非対称な確率分布であるsine-skewed 巻き込みコーシー分布をコンポーネントに持つ有限混合モデルを用いることにより、通常の円周上の対称な確率分布(巻き込みコーシー分布、von Mises分布)をコンポーネントに持つ有限混合モデルよりも、赤池情報量規準の意味で良いことを確認し、また我々の推定結果がカーネル推定に近い結論を得ることを確認した。さらに、円周上のより広いクラスの非対称分布をコンポーネントに持つ有限混合モデルにより与えられた最尤推定量が、ある種の強一致性を持つための条件を明らかにした。なお、円周上の確率分布とは、風向きのように0°と360°は同一視できる、角度や24時間表示の時刻(0時と24時は同一視できる)を表すことができるモデルのことである。 また、研究目的に記載した、向きと大きさを持つ2次元データの分布を表すシリンダー上の確率モデルの識別可能性については、それを確かめるための三角モーメントを用いた新たな証明方法を開発した。ただしこの証明方法により、これまで多くの研究者により提案されてきた円周上の非対称分布、およびその非対称分布を周辺分布に持つシリンダー上の確率モデルは、通常の識別可能性は満たすが、Generic identifiabilityと呼ばれる有限混合モデルの意味での識別可能性は満たさない可能性が高いことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果としては、査読付き論文を1本出すことができ、また識別可能性に関する研究においても、ワーキングペーパーとして纏めることができたため、結果だけを見れば順調に進んでいる。しかしながら、今回開発した円周上およびシリンダー上の確率モデルの識別可能性をチェックする方法により、当初予定したシリンダー上の確率モデルがgeneric identifiabilityと呼ばれる性質を満たすことが難しいことがわかったため、結果的に有限混合モデルや隠れマルコフモデルのコンポーネントとしては適切でない可能性があることも明らかになった。このため、新たに提案する予定であったシリンダー上のモデルに代わる確率モデルを考慮する必要があり、いくつかのモデルを検討したが、現時点ではどのモデルもこのgeneric identifiabilityを満たすことが示せていない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は以下の3点について研究を進めていく。 1. シリンダー上の確率モデルであるAbe-Ley分布において、円周側の周辺分布を拡張する。Abe-Ley分布の場合は、円周側の周辺分布がsine-skewed型の確率分布になるが、このsine-skewed分布をさらに一般化できることがわかった。このため、この分布に、Abe-Ley分布と同様の方法で正値の値をとる半直線上の確率分布を組み込むこと、およびその最尤推定量の一致性を示すことが第一の目標とする。 2. 球面上の確率モデルに拡張する前に、まずは円周上でGeneric identifiabilityを持つような円周上の非対称分布の開発を考える。これは、非常に難しい問題ではあるが、本研究課題を遂行する上でカギとなるため、挑戦したい。 3. 球面上の新しい確率モデルの開発。現在、上記の2.の問題が解決できない場合は、Generic identifiabilityを満たす球面上の非対称分布も構築ができない。しかしながら、少しだけ研究の方向性を変え、中心から歪みのない同心円状の形状の等高線を持つvon Mises-Fisher分布の確率密度関数よりは、より柔軟な形状の等高線が実現可能なモデリングについても研究を行う。これは厳密にいえば非対称ではないが、回転に関して対称でないという意味では、一つの非対称な確率モデルに対する研究といえる。このような試みはすでに存在する(例えば、Fisher-Bingham分布、およびその特殊なケースとしてKent分布など)が、研究の余地がある。
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Causes of Carryover |
2020年度は、国際学会(Computational and Methodological Statistics)での発表とベルギーでの研究打ち合わせを行う計画を立てていた。欧州への往復の旅費(宿泊費も含む)およびその他の研究に関わる経費を考えると、予算が足りなくなる可能性があると考えたため、2019年度の予算を2020年度に繰り越しを行うことを当初から決めていた。また2019年の台湾で開催されたワークショップの講演に関しては、主催者側からの旅費の支給があったため、科研費からの予算の支出が不要となり、論文の英文校正に関しては、共同研究者の一人が負担したため、本研究費からの支出が不要となった。さらに新型コロナウイルスの影響により、2月から3月に予定していた研究打ち合わせ、および学会への参加が全てキャンセルとなったため、本研究費からの支出が不要となった。
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Research Products
(2 results)