2019 Fiscal Year Research-status Report
Incremental Computing based on Program Transformations
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19K11896
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森畑 明昌 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10582257)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 漸増計算 / プログラム変換 / プログラム微分 / 型パラメトリシティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、プログラムの入力が僅かに変化した際に出力がどう変化するかを高速に計算する手法である「漸増計算」について、これを意識せずに記述したプログラムを漸増計算を行うプログラムへ変換する手法(プログラム漸増化手法)を確立することである。 2019年度は、既存のプログラム漸増化手法の中で、特に「プログラム微分」に基づく手法に注目した。この手法は、プログラムに対して、その入力の変化から出力の変化を計算する「微分」関数を自動導出する手法である。プログラム微分に、一般的なプログラムを扱うことができるポテンシャルがあること、理論的な性質に優れることという2つの大きな特徴があるが、手法自体が複雑であり、実用に繋がるかどうか不明瞭であった。これに対し、型パラメトリシティと呼ばれる手法を用いることで明快な再定式化を与えられることを発見した。型パラメトリシティとは、プログラムの型だけからプログラムの性質を調べる手法であり、プログラムがどのように複雑になろうとも理論が複雑にならない点に特徴がある。これを用いて、プログラム微分が実用的なプログラムに適用可能であり、微分の導出も単にプリミティブ演算の置換のみで達できることを示した。さらに、この再定式化により、「プログラム微分」のアプローチが漸増計算以外の性質(数学的な「微分」「積分」など)にも直接繋がりうる物であることを示した。この成果は日本ソフトウェア科学会第36回大会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の見通しでは、一般的なプログラムの漸増化を理論的に明快な形で捉えるのは難しいと予想していたが、萌芽的な成果とはいえ、プログラム微分と型パラメトリシティの組み合わせが有用であるとの発見ができたのは望外であったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
プログラム微分と型パラメトリシティの組み合わせは確かに有用であるが、これだけで現実的な漸増化を全てカバーできるとは思えない。この手法の限界を明らかにし、必要に応じてさらなる発展に取り組む。また、この手法を具体的な問題に適用し有用性を確認するのも重要である。
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Causes of Carryover |
今年度は萌芽的な成果は得られたものの、その意義や有用性・限界などまでは分からなかったため、国際会議論文等にまとめるには至らなかった。そのことが今年度の使用額に影響している。また、年度末に出張をし様々な専門家と議論をすることを計画していたが、新型コロナウィルス感染症の流行のためこれがキャンセルされたことも少なくない影響があった。 これをふまえ、次年度は専門家との議論のための出張や、国際会議等への投稿のために助成金を使用するつもりである。ただし、新型コロナウィルス感染症の状況によっては、次々年度以降にずれ込む可能性もある。
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Research Products
(1 results)