2019 Fiscal Year Research-status Report
放射線誘発発がん変異のゲノム・エピゲノムシグニチャーの解明
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19K12323
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鈴木 啓司 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 准教授 (00196809)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射線 / ゲノム / シグニチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題は、研究代表者が独自に開発した正常ヒト甲状腺濾胞細胞の培養系を用い、放射線照射により誘発される遺伝子融合型変異を同定して、遺伝子融合ジャンクションに残されると考えられるゲノムシグニチャーとクロマチン融合領域のエピゲノムシグニチャーを同定し、その結果を、散発性の甲状腺がんの解析結果と比較することにより、放射線痕跡の存在を証明することを目的として行われている研究である。 具体的には、今年度は、正常ヒト甲状腺濾胞細胞に、1~10 Gyまでのγ線を照射し、数日の培養期間を置いた後、1000個の細胞毎にサブグループ化を行い、それぞれのグループから、GeneRead Pure mRNA kitを用いてmRNAを精製し、cDNAに変換した後に、融合遺伝子の両側に設定したプライマーを用いて、SYBR Premix Ex Taq IIによる定量的Real-time PCR(Thermal Cycler Dice real-time system)により融合遺伝子の発現を確認する実験系を確立した。対象とする変異は、RET/PTC1、RET/PTC3、TPR-NTRK1、およびETV6-NTRK3を計画しており、このうち、RET/PTC1については、既に変異が報告されている甲状腺がん細胞株において、その検出を確認した。 研究代表者は、独自の放射線発がん新理論として、『放射線により誘発される老化様細胞死が組織微小環境を撹乱して自然発生の発がん変異を有する細胞の増殖を促進してがんを誘起する』を提唱し、これを証明しようとしているが、本研究は、放射線により直接誘起された遺伝子融合型変異が留める放射線シグニチャーを証明することにより、放射線誘発小児甲状腺がんの発がん変異の放射線起因を議論することを可能にするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、研究立案当初に予定していたマイルストーンを着実に達成しており、その点で、順調に進行していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、サブグループにおいて、融合遺伝子発現の検索を継続し、発現が確認されたグループについては、さらにサブクローン化を進め、融合遺伝子を有するクローンを樹立する。その上で、融合遺伝子領域をKOD FXを用いたPCRにより増幅し、ExoSAP-IT PCR clean-up reagentによりPCR産物を精製した後に、Big Dye Terminator sequencing kit version 3.1を用いて、BI3730 automated sequencer により塩基配列を決定する。得られた塩基配列は、既に決定している散発性甲状腺がんの該当する融合遺伝子の塩基配列と比較してゲノムシグニチャーを特定する計画である。
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