2021 Fiscal Year Research-status Report
母親の国際労働移動を経験した子ども世代の仕事観と家族観、世代間ケアに関する研究
Project/Area Number |
19K12618
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松前 もゆる 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90549619)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際労働移動 / ジェンダー / ブルガリア / EU / 仕事観 / 家族観 / 世代間関係 / ケア |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はブルガリアとイタリアで現地調査を実施し、本研究の主要な対象である、2000年代に母親の国際労働移動を経験し現在20~30代となった世代への聞きとりを進める予定であったが、前年度に続き新型コロナウイルス感染症流行の影響で国外への渡航および現地調査は断念せざるを得なかった。こうした状況下、今年度も研究代表者がこれまでに実施した母親世代への労働移動や仕事観、家族観に関する聞きとり調査を再検討するとともに、以前に聞きとりをした母親世代とその子ども世代に依頼し、可能な範囲でオンライン調査(オンライン・インタビューおよびチャットの利用)を実施した。また、ブルガリア出身者の労働移動に関し、その動向と移動をめぐる言説について各種報告やインターネット記事から探ることを試みた。その結果、同じくイタリアで働くブルガリア出身者の中でも世代やジェンダー、職業、教育、さらには移動の時期や状況等によって享受できる権利に違いがあることが明らかとなり、人々の戦略や実践の違いも見えてきた。一方で、この数年、出稼ぎ先の諸外国から一部ブルガリアへ帰国する人たちがいること、また、ブルガリア社会においては人口減少が顕著となり、とりわけ若年層の人口流出が「問題」として語られる傾向にあることも明らかとなった。帰国の選択にはパンデミックの影響も指摘されるが、研究代表者の聞きとり調査からは、仕事としてのケアと家族のケアを両立させようとする試みという側面も見えてくる。 以上の調査結果の一部については、拙稿「移動・ジェンダー・世代――現代ヨーロッパにおける労働移動の事例から」(『法律時報』93巻8号、2021年)や2022年度に刊行予定の論文等にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
予定していたブルガリアおよびイタリアでの現地調査が実施できないなか、研究代表者がこれまで聞きとりを続けてきたブルガリア出身で他のEU諸国で働く女性たちの経験を再検討し、オンライン・インタビューから明らかになったその子ども世代の仕事や移動、家族をめぐる実践と比較しつつ捉え直す作業を進めた。その過程で、同じくイタリアで働くブルガリア出身者の中でも世代やジェンダー、職業、教育、さらには移動の時期や状況等によって享受できる権利に違いがあることが明らかとなり、人々の戦略や実践の違いも見えてきた。しかし、新型コロナウイルス感染症流行の影響により2020年度に続き2021年度も予定していた現地調査を行なうことができず、とくに体制転換後に育ち、母親たちの国際労働移動を経験した子ども世代への聞きとり、また生活の中で人々の「仕事」やケアを捉えようとするフィールドワークの実施に遅れが出ている。 なお、オンライン調査を通じ、この数年、出稼ぎ先の諸外国から一部ブルガリアへ帰国する人たちがいること、また、ブルガリア社会においては人口減少が顕著となり、若年層の人口流出が「問題」として語られる傾向にあることも明らかになったことから、今後ブルガリア出身者たち、とくに若い世代が仕事やケア、移動をめぐっていかなる選択をするか注目されるところである。生活の中で「仕事」とケアを捉え、また若い世代に聞きとり対象を広げるべく、現地調査の可能性を探りながらさらに研究を進めたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に続き2021年度もイタリアおよびブルガリアでの現地調査を中止せざるを得ず、研究計画に遅れが生じているが、実際に「誰が」「どこで」「どのような」活動(仕事やケア)を、生活の中で「どう」組み合わせながら実践しているのかを捉えるためには、人々が生活する場に身を置きながらの調査が不可欠であり、可能な限り早期にイタリアおよびブルガリアでの調査を実施したいと考えている。ただし、日本および渡航予定先の新型コロナウイルス感染症の状況について依然確実なことはわからず、またウクライナ情勢の影響拡大も懸念されることから、渡航が困難な状況にあっては、ひき続きオンライン・ツールを用いた調査の可能性も探りたい。 同時に、今後も関連文献や資料の収集を継続して文献調査を進めて最新の動向や議論の枠組みを精査することで、現地調査が可能になった暁には万全の態勢でのぞめるよう準備を整えておく。そして、こうしてそれぞれの調査から得られた成果を分析・考察し、オンライン研究会等で報告する、また論考を学術誌等で発表することを通じて関心を共有する研究者と意見交換をし、コメントや助言を得ることでさらに研究を深めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行の影響により、2019年度には2020年3月に予定していたイタリアでの調査を、さらに2020年度および2021年度にはブルガリアとイタリアで複数回予定していた現地調査をそれぞれ中止せざるを得なかった。また、国内外の学会も基本的にオンライン開催となり、結果として旅費等の支出がなかったため、次年度使用額が生じた。日本国内および渡航予定先で新型コロナウイルス感染症の状況等が落ち着き、渡航が可能になったところで現地調査を実施し、研究を遂行したいと考えている。
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Research Products
(2 results)