2020 Fiscal Year Research-status Report
アングロアメリカ太平洋地域における日本人売買春の社会史ー公文書の分析を中心に
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19K12622
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
大原関 一浩 西南学院大学, 国際文化学部, 准教授 (00749880)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 性管理 / ハワイ / オーストラリア / 移住 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、「ジェンダー史学会2020年度シンポジウム:開国の前線に立つ女性たち―近代の性売買におけるインターナショナリティ―」で、ハワイにおける日本人売買春の歴史について報告した(2020年10月)。6名の研究者と議論するなかで、各国・各時代における性売買の類似点や相違点を確認し、共通する問題意識が見えてきた。特に、「開国」以後、太平洋地域で人やモノのグローバルな流れが活発になり、近代国家が形成されていくなかで、性売買を通じた人的交流の意義を問い直すことは、どの時代や地域を研究対象にするかに関わらず、重要な課題であることを再確認できた。 さらに、昨年度参加した「京都アメリカ研究プロセミナー2019」での発表・議論のなかで見えてきた課題について理解を深めるため、2020年度は、二次文献の収集・読解を行った。また、これまでハワイで収集してきた一次史料(連邦政府裁判所記録)の分析にもとづき、1910年代のハワイにおける性管理と日本人売買春の衰退について論文をまとめ、所属大学の紀要で発表した(「1910年代のハワイにおける性管理」『国際文化論集』35巻2号)。前年の論文(「併合後のハワイにおける性管理」『国際文化論集』34巻2号)と合わせて、ハワイにおける日本人売買春については、予定していた課題をほぼ全て終えることができた。 2020年度は、新型ウィルス感染拡大による渡航規制のため、計画していたオーストラリアでの史料収集ができなかったので、オーストラリアにおける日本人売買春の研究については、進度があまりなかった。しかし、二次文献の収集(購入による)と、インターネットで公開されている新聞データベース(オーストラリア国立図書館が運営する『Trove』)を利用した新聞記事の収集・分析にかなりの時間を費やしたので、取り組むべき課題・収集すべき史料がよりはっきりと見えてきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、オーストラリアにおける日本人売買春の歴史について研究を進める予定だったが、渡航規制により、現地での史料収集が行えなかったので、遅れている。 しかし、学期中は、多数の二次文献や新聞記事を収集(購入)し、長期休み中は、それらの読解を行えたので、当該テーマに関しては、これまでの先行研究でわかったこと、まだよくわかっていないこと、についての整理を行うことができた。 また、国内学会のシンポジウム(Zoom開催)に参加し、国内外の多様な性売買・性管理の歴史についての理解を深め、研究者たちと意見交換する機会を得た。それによって、太平洋地域における日本人売買春の歴史を研究する意義を、多角的に考えることができた。 当初の計画とはちがったことをしたが、二次文献の読解と学会での発表・議論を通じて、思考が深まったので、やや遅れているが、進展はあったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、国内外の感染状況によるが、2020年度に実行できなかったオーストラリアでの史料収集を実行したい。もしできない場合は、これまで行ってきた北米西部における日本人売買春の歴史に関する研究成果にもとづき、オーストラリアにおける日本人売買春との比較分析を行い、論考にまとめたい。そこで見えてくる知見や課題は、実際に資料の収集・分析をする際に、役立てたい。 また、2021年度は、計画では、アラスカにおける日本人売買春に関する史料収集を現地で行う予定であるが、これもウィルスの感染状況により実行できない可能性がある。その場合は、二次文献の収集とネットで利用可能な史料(新聞データベースなど)の読解・分析を中心に行う。さらに、合衆国の国立文書管理局などのアーカイブとコンタクトをとり、今後収集すべき史料の所在の確認を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、海外資料収集ができなかったことによる。 次年度は、2回の海外資料収集、1回の国内資料収集、学会発表、関連書籍の購入などに使用する予定である。
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Research Products
(2 results)