2020 Fiscal Year Research-status Report
公害関係資料の適切な管理と公開に関する研究:アーカイブズ学の観点から
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19K12705
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
清水 善仁 中央大学, 文学部, 准教授 (30437181)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公害関係資料 / 公害資料館 / 公文書館 / アーカイブズ / アーカイブズ学 / 歴史学 / 社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、公害資料館をはじめとする全国の資料保存機関がWebサイト等で提供しているデータベースや検索システムを活用して、公害関係資料の所蔵状況調査を実施した(前年度からの継続)。当面の調査は地方自治体の公文書館を対象としており、令和2年度は都道府県の公文書館に加え、政令指定都市の公文書館の調査にも着手することができた。その結果、作業途中分を含め、14機関9,059点の資料データを収集した。当該データは前年度分とあわせてすでに2万点を超えており、とりわけ戦後の公害に関する公文書を中心とした多様な資料情報が蓄積されている。この調査だけでも、各機関における公害関係資料の所蔵状況の一端や保存されている公害関係資料の傾向を把握することができ、大変有用であるといえる。 また、公害関係資料に関する研究として、研究代表者は令和3年1月に論文「公害資料の収集と解釈における論点」(『環境と公害』第50巻3号)を発表した。この論文は、研究代表者が研究分担者として参加している科研費研究「公害経験の継承に向けた公害資料館の社会的機能の研究」(研究代表者:清水万由子、課題番号19K12464)の成果ではあるが、公害関係資料の問題は本研究にも大いにかかわるものであるとともに、本研究の成果もふまえていることから、本研究の実績としても明記しておきたい。なお、この論文では、公害関係資料の範囲と存在意義をあらためて整理するとともに、公害資料の収集と解釈をめぐって提起される様々な論点について考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全国の資料保存機関における公害関係資料の所蔵状況調査については、令和2年度より調査人員を増やして作業を進めているが、調査対象のデータが膨大であるとともに、新型コロナウイルス感染拡大の関係で継続的な作業ができなかったため、データ収集に時間を要していることが原因である。 また、法政大学大原社会問題研究所環境アーカイブズ所蔵の公害関係資料を対象とした資料群構造把握や資料作成母体の組織構造研究は、令和2年度より研究代表者の所属が変わり、なおかつ新型コロナウイルス感染拡大にともなう同機関での資料閲覧の制限等があったため、研究が進捗していない。
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Strategy for Future Research Activity |
全国の資料保存機関における公害関係資料の所蔵状況調査を継続して実施する。そのうえで、調査が終了した機関のみを対象とする等、可能な範囲で各機関への資料所蔵状況等のアンケート調査の実施を目指したい。また、現在おこなっている調査では把握が難しい古文書や私文書・個人資料等を対象とした所蔵状況アンケートを先行して実施することも検討したい。なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、特徴的な取り組みをおこなっている機関への訪問調査は困難な状況が続いている。できうれば訪問調査を実施したいが、メールやWeb会議システム等を活用したヒアリングの方法についても引き続き検討する。 また、公害関係資料の資料群構造把握や資料作成母体の組織構造研究については、新型コロナウイルス感染拡大にともなう資料閲覧の制限等の状況もふまえつつ、必ずしも法政大学大原社会問題研究所環境アーカイブズの所蔵資料に限定せず、幅広い公害関係資料を視野に入れて研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は2点ある。1点目は調査を担う研究協力者の作業時間が当初計画より短かったため。2点目は新型コロナウイルス感染拡大にともない、各地の公害資料館や公文書館等への訪問調査が叶わず、旅費をほとんど使用しなかったためである。 1点目については、調査人員のさらなる増員等により作業のスピードアップを図るとともに、適正な経費の使用に努めたい。2点目については、今後も感染状況により資料保存機関の臨時休館等の事態が想定されるが、ヒアリングや資料閲覧が可能な機関がある場合には、移動距離の短い関東近県を中心に積極的に訪問して調査を進めていきたい。
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Research Products
(1 results)