2019 Fiscal Year Research-status Report
子ども時代の「心に残る」読書に関する実証的研究:読書体験の形成要素と長期的効果
Project/Area Number |
19K12722
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
須賀 千絵 実践女子大学, 文学部, 講師 (80310390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
汐崎 順子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 講師(非常勤) (50449021)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 読書 / 子ども / 読書体験 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、①子ども時代の心に残る読書を分析するうえでの枠組みの構築、②子ども文庫での子どもの読書の観察、③分析用データとしての子ども時代の読書体験記の収集を行った。 まず、読書体験を記述した文献の分析を通して、子ども時代の心に残る読書とは何かを捉えるため、分析枠組みの構築を行った。まず「読者反応理論」に関する研究の複数のレビュー論文から、研究を整理する際に用いられる概念を抽出し、概念間の関係を考慮したうえで、分析の枠組みを仮定した。この仮の枠組みをもとに、複数の人々の読書体験を集めたCarlsen and Sherrillの"Voices of Readers"(1988)と山口雅子の『絵本の記憶、子どもの気持ち』(2014)の記述を対象に、実際に分析を試行し、仮定した枠組みの検証と精緻化を行った。その結果、「テクスト」「コンテクスト」「読者」の3点から成る分析枠組みは、研究を行ううえで活用可能であることを確認することができた。分析枠組みに関する研究の成果は、2019年度日本図書館情報学会研究大会において発表した。 上記の研究と並行して、読書体験の分析に役立てるため、全国の子ども文庫を訪問し、子どもの読書の状況を観察し、合わせて文庫の主催者や親などの周囲の大人からも子どもの読書の実情についてお話を伺った。観察を積み重ねることで、子どもの読書行動について理解が深まり、分析の観点を設定するための手掛かりを得ることができた。訪問の一部について、『この本読んで!』に連載の形で発表を行った。 さらに次年度以降の分析に備え、子ども時代の読書体験が記述され、図書などの形で公刊されている国内外の文献の収集を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、複数の大学での子ども時代の読書体験に関する課題レポートの分析を行うため、2019年度はデータ入力のための準備を行う予定であった。分析を行うにあたり、各大学で研究倫理審査の承認を得る必要があったが、研究倫理審査の対象外であるという理由などで審査を受審できなかったケース、審査にあたって予想より厳しい条件がついたケースなどがあり、一部の大学については、分析そのものを断念せざるを得なかった。そのため研究計画の見直しが必要となり、予定通りの作業を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度以降、研究倫理審査で承認を得られた2大学の課題レポートを対象に、データ入力を進め、分析を行う。合わせて、データの不足を補うために収集した文献の選別、データ入力、分析も進める。 グループインタビューを通して子ども時代の読書体験を聞き取る計画も立てていたが、新型コロナウイルス拡大の影響で、2020年度中の実施が困難になったため、今後の社会状況を注視しつつ、計画を延期するか、あるいは研究方法を見直すか、判断する。
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Research Products
(5 results)