2020 Fiscal Year Research-status Report
一軸配向化高靱性合成コラーゲンゲル線維束の生体内再構築に関する適応制御機序の解明
Project/Area Number |
19K12746
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
近藤 英司 北海道大学, 大学病院, 教授 (60374724)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 和則 北海道大学, 医学研究院, 名誉教授 (20166507)
柚木 俊二 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 上席研究員 (20399398)
王 磊 北海道大学, 医学研究院, 助教 (70637975)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コラーゲン / ゲル / 線維束 / 適応制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生体内の異なる生物学的および物理的環境(関節内・外、生理的負荷・除負荷)における、線維径の異なる一軸配向化合成コラーゲン線維束(合成腱マトリクス)の再構築現象を、凍結解凍処理腱(天然腱マトリクス)のそれと比較することにより、その適応制御機序を解明することである。令和2年度は、平成31年度に作製した線維径200μmおよび800μmの高靱性一軸配向化合成コラーゲン線維束を3次元化して直径2 mm、幅3 mm、長さ50 mmの合成コラーゲン束を作製した。SEMによる横断面の観察では、fascicle間にmicrosizeの間隙が観察された。細胞侵入性などの評価のため対照として凍結乾燥工程を用いない完全緻密性コラーゲンを作製した。SEMによる矢状面での観察では、気孔構造が見られない緻密構造が観察されたが、横断面の観察では一部空隙を持つ層構造が観察された。そのため対照のコラーゲン作製方法を調整(GAを加えて固定化、EtOHで脱水、t-BuOH凍結乾燥法で乾燥)し、SEMにて緻密体であることを確認した。 次に日本白色家兎を用いた膝蓋腱中央欠損モデルを用いて合成腱マトリクスの埋植実験を行った。全身麻酔後、膝に縦切開を加え右膝蓋腱の中央1/3を採取し、高靱性一軸配向化合成コラーゲン線維束を移植した。左膝には完全緻密性コラーゲンを移植して比較対照とした。術後3週における組織学的観察では、HE染色にてfascicle間に紡錘形の核を有する線維芽細胞様細胞が多数観察され、線維方向に配向性が観察された。一方、完全緻密性コラーゲンにおいてはコラーゲン内に細胞は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高靱性一軸配向化合成コラーゲン線維束の作製に成功したが、新型コロナウイルス蔓延による影響により、施設における実験の中断および動物などの消耗品購入に遅延が生じたため特にIn vivo実験に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
実験には家兎36羽を用いる。日本白色兎を用いて右膝蓋腱の中央1/3を採取し、生理的および除負荷の環境下において内径比率の異なる2種類の階層化した配向化合成コラーゲン束を移植する。左膝では凍結解凍処理膝蓋腱を移植して比較対照とする。術後3、6、12週で屠殺し、7羽を生体力学的およ組織学的評価へ、5羽をPCR解析に供する。 生体力学的評価:膝蓋骨―腱―脛骨複合体を摘出し、万能試験機に組み込んだ生体軟組織材料試験システムを用いて37℃生理食塩水中での引張試験を行う。LD曲線およびSS曲線から引張強度、弾性率、破断歪みを算出する 組織学的および超微組織学的観察:HE、トルイジンブルー、およびIII型コラーゲン免疫染色薄切片を光学顕微鏡にて観察する。またコラーゲン線維配向の変化をSEMで観察する。更に、配向軸と垂直に超薄切片を作製し、ウラニル・クエン酸鉛染色を行ってTEMによりFibril横断面の超微細構造を解析する。 RT-PCR解析:腱マトリクスに浸潤する外来性浸潤細胞からtotal RNAを抽出し、逆転写を行いcDNAを合成する。I, III, IX型コラーゲン, MMP-13, TGF-beta1およびIL-1betaに対するPCRを行い、内部コントロールにはGAPDHを用いてmRNAの相対的発現量を定量化する。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルス蔓延による影響により、施設における実験の中断および動物などの消耗品購入に遅延が生じたため特にIn vivo実験に遅れが生じた。またいくつかの購入依頼を束ねたたうえで、複数社の見積もり競争により物品発注を行った。公的研究機関であるため物品購入に関する公平性・透明性を徹底していること、および経理業務の負担軽減が理由である。このため、想定価格からの値引き等が発生し、当初予定の金額に対して残額が発生してしまった。
(使用計画)計画にしたがって動物実験を再開する。値引きによる差額を最小化するため、単価の大きなもの(単価6万円のコラーゲン溶液など)を前倒しで購入する。
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Research Products
(11 results)