2019 Fiscal Year Research-status Report
多様な細胞に適用可能な異種細胞間接着誘導技術とその応用
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19K12805
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
有馬 祐介 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (90402792)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞表面修飾 / ペプチド核酸 / 組み換えタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
生細胞の表面を修飾し異種細胞間の接着を誘導する技術は,生体類似組織の作製など細胞工学への幅広い応用が期待されている。しかし,単鎖DNA-ポリエチレングリコール-リン脂質複合体(ssDNA-PEG-lipid)を用いた従来法では,細胞間接着誘導が実現困難な細胞種があることがわかった。そこで,多種多様な細胞の表面を修飾することが可能な表面修飾分子を検討した。 中性電荷のペプチド核酸(PNA)を有するポリエチレングリコール-脂質複合体(PNA-PEG-lipid)を合成した。蛍光標識PNA-PEG-lipid溶液を細胞へ添加後,共焦点顕微鏡観察およびフローサイトメトリーによる評価から,細胞表面をPNA-PEG-lipidで均一かつ高効率で修飾可能であることが分かった。さらに,多種類の細胞への修飾を調べ,これまで用いてきたssDNA-PEG-lipidで修飾が困難な細胞について検討したところ,PNA-PEG-lipidを用いると修飾効率,修飾量ともに上回ることが分かった。多様な細胞の表面を修飾する分子としてPNA-PEG-lipidが有用であることを明らかとした。 また,別の細胞表面修飾法として,組み換えタンパク質で細胞表面を修飾する方法についても検討した。組み換えタンパク質内のタグ配列と特異的に結合するリガンドをもつligand-PEG-lipidを複数種合成した。ligand-PEG-lipidで細胞表面を修飾したのちタグ配列を有する緑色蛍光タンパク質(EGFP)を作用させたところ,細胞表面にEGFPを修飾することができた。修飾による細胞毒性はなく,多様な細胞についても適用可能であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PNA-PEG-lipidの合成については反応条件を検討し,PNA導入効率の高い反応条件を見出した。当初の期待通り,従来のssDNA-PEG-lipidでは修飾困難な細胞に対してもPNA-PEG-lipidは修飾可能であることが分かり,PNA-PEG-lipidの有用性を示した。 また,組み換えタンパク質で細胞表面を修飾するためのligand-PEG-lipidについても複数種合成し,いずれのligand-PEG-lipidを用いても組み換えタンパク質を修飾することができた。隣接細胞が有する膜タンパク質と相互作用する組み換えタンパク質で修飾すれば,細胞間の接着を誘導できると考えられる。 以上,当初の計画に沿った結果を得ることができており,次年度はさらに発展させていく。
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Strategy for Future Research Activity |
PNA-PEG-lipid,ligand-PEG-lipidいずれの分子を用いても細胞表面を修飾できたことから,次年度は細胞間接着の誘導に主に取り組む。PNA-PEG-lipidについては相補配列PNAまたはssDNA-PEG-lipidで隣接細胞を修飾し,細胞間接着の誘導を試みる。ligand-PEG-lipidについては隣接細胞がもつ膜タンパク質と相互作用するタンパク質で修飾し,細胞間接着の誘導を試みる。修飾後の細胞応答についても調べ,低細胞毒性と細胞間接着の誘導を両立できる修飾量の至適化を行う。 また,ssDNA-PEG-lipidとPNA-PEG-lipidの修飾効率の細胞種依存性に関し,細胞表面修飾を阻害する因子に関する情報の獲得を目指す。細胞表面に発現するいくつかの分子を標識し,その分子の発現量とssDNAまたはPNA-PEG-lipid修飾量の相関性を調べる。
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