2019 Fiscal Year Research-status Report
1920年代後半ロシア演劇における「ファクト」の概念と方法論的展開の考察
Project/Area Number |
19K12976
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 愉 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 非常勤研究員 (00816556)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ロシア演劇 / セルゲイ・トレチヤコフ / 検閲 / ファクトの文学 / ロシア・アヴァンギャルド |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年8-9月、ロシア国立文学芸術文書館にて、セルゲイ・トレチヤコフに関する資料を蒐集。これは、2020年度に予定しているトレチヤコフの「ファクト」概念を分析する際の素材となる。 2019年10月には、ロシアのジャーナルШаги / StepsでЗритель как лаборант: о работе Научно-исследовательской лаборатории Государственного Театра им. Мейерхольда(ラボラントとしての観客:メイエルホリド劇場付属研究工房の仕事に関して)を発表。これは、観客概念を拡張する試みとしてのメイエルホリド劇場付属研究工房での活動をフランスの哲学者ジャック・ランシエールの議論と紐づけて論じたものである。また、レニングラード芸術史研究所の活動に関する論文を執筆投稿した(刊行は2020年度)。 口頭発表では、2019年6月に日本演劇学会にて「1920年代ロシア演劇学の歴史的考察」と題した報告を行なった。これは上記のレニングラード学派に関する論文の素材となった。また、2019年10月に日本ロシア文学会全国大会のWS「ロシア・アヴァンギャルドのサウンドスケープ」内で「1920年代ロシア演劇における聴覚文化」と題した報告を行ない、変容する都市文化の中で演劇表現において聴覚文化がどのように導入されたかを考察した。 このように、初年度はロシア演劇の背景を改めて(新しい視点で)把握、考察することを目的として当初の予定通り、研究を実施した。 そのほか、事典の項目を3点執筆。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モスクワにて、資料調査を実施するとともに、ロシアと日本のレフェリー・ジャーナルにそれぞれ投稿(日本国内のものは2020年度に刊行)し、発表した。同時代の演劇メディアに関する調査がやや遅れているが、研究計画は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、引き続き1920年代の演劇メディアを調査するとともに、セルゲイ・トレチヤコフの「ファクト」概念を、彼の理論および具体的作品から考察していく。調査予定のメディアは日本国内に比較的確認できるとはいえ、完全ではないので、ロシアでの資料調査も予定している。なお、予定していた成果発表に関しては、昨今の状況により、2020年8月初旬にカナダで開催予定だった国際中欧・東欧研究協議会が延期、2020年11月にモスクワで予定されている国際学会も未定となっている。口頭発表の機会は引き続き模索しつつも、今年度は原稿ベースでの研究成果発表を念頭において、計画を推進していくことが必要だと考えている。
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Causes of Carryover |
2019年度末の国内学会がコロナ・ウィルスの影響により延期となったため生じた。次年度の研究発表の予算(旅費)に回す計画である。
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Research Products
(5 results)
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[Book] ロシア文化事典2019
Author(s)
沼野 充義 (編集), 望月 哲男 (編集), 池田 嘉郎 (編集)
Total Pages
890(うち伊藤愉分担箇所434-435, 438-439)
Publisher
丸善出版