2022 Fiscal Year Annual Research Report
近世前期における〈勧化〉――勧化本作家の活動に注目して――
Project/Area Number |
19K13049
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
木村 迪子 大阪大谷大学, 文学部, 准教授 (40836475)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 近世仏書 / 近世文学 / 勧化本 / 出版 / 民衆教化 / 浄土真宗 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は研究の総括として、早稲田大学図書館・国立国会図書館・国文学研究資料館・龍谷大学大宮図書館などへの書誌調査を行った。研究成果については以下のとおり報告を行った。 1)勧化本作家玄貞について、その活動内容を論文にて報告した。(『国文学研究』196集、2022.6)従来、浅井了意の仮託仏書実作者としての評価に甘んじていた真宗仏光寺派の勧化本作家玄貞を、彼の本を板行した書肆との関わり合いから再検討を行った。玄貞の著述の大半は17世紀末頃から活動を開始した新興の書肆らから板行されていた。折しも、新興の書肆らによる類板・重板が老舗書肆を苦しめている状況下であった。了意の仮託仏書に関与する玄貞が最終的に真宗聖教の注釈を手がけ、歴々たる学僧等と書籍目録にその名を並べるにいたったのと同様、新興の書肆らもまた、類板重板をおかす立場から、これを訴える立場へと変化を遂げたことが明らかになった。 2)山雲子の仏書執筆について、シンポジウムにて口頭発表を行った。(佛教文学会《シンポジウム》「仏教と出版の日本近世」 2022年12月3日)山雲子の仏書の大半が、彼の出家前に著されていたことを示し、その内容の素人くささから、僧侶ではない勧化本作家の発生を指摘した。新しいタイプの勧化本作家の登場は、勧化本の宗教性が徐々に希薄化し、娯楽性を重視する過渡期に位置するものではないかと提言した。 3)勧化本作家妙音寺について、真宗学僧の了信との関係を踏まえた検討を行った。(『雅俗』22号掲載予定)従来殆ど言及されることがなかった勧化本作家妙音寺は、実際には八部もの勧化本を著し、またその内容は以後の真宗系勧化本の特質をよくあらわしていたことから、その濫觴と位置づけうるものであることを指摘した。更に、本文照合を行うことで、妙音寺が真宗の学僧了信と同一人物であると結論づけた。
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Research Products
(3 results)