2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K13050
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小谷 瑛輔 明治大学, 国際日本学部, 専任准教授 (10753618)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 芥川龍之介 / 日本文学 / 自殺 / 自己表象 / 自筆資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、芥川龍之介の自殺に関して、作家本人がどのような表現を試みたのか、そしてそれがどのような力学によって後世の作家イメージを構成することになったのかを明らかにしようとする研究である。特に、芥川の遺稿が死後にそのまま公開されるのではなく、様々な操作を加えられた上で公開された経緯が近年明らかになってきたことを踏まえ、十分に調査されてこなかった資料に即して分析するのが本研究の着眼点である。 芥川の自殺前の遺構に関する不審な編集の痕跡に関するこれまでの本格的な研究は、「或弁護士の家」と呼ばれる原稿に関するもの(小谷瑛輔「坂口安吾「文学のふるさと」と芥川龍之介の遺稿」『昭和文学研究』2016年9月)のみであったが、本研究では、「人を殺したかしら?」に検討対象を広げ、この問題に関して検討した。 本研究では、芥川龍之介自筆資料の多くが寄贈された山梨県立文学館の所蔵資料、これまで調査されてこなかった藤沢市文書館「葛巻文庫」所蔵の自筆資料を調査することを通じて、当該の遺稿に関して、次のことを明らかにした。 【1】当該の遺稿は、芥川自身の手によって2~3種類またはそれ以上のバリアントを持った形で残されたということ。【2】それらの一部は散逸し、残存しているものも複数の資料所蔵施設に分散しているということ。【3】生前に芥川自身、周囲の関係者にたびたび独特の形で顕示していたことの意図。【4】原稿管理者であった葛巻義敏の「復元」作業において単に原型を復元する目的とは明らかに異なる目的で編集された痕跡。【5】その「編集」に関する傾向や方針を一定程度推定可能であること。 この研究の成果は、2020年12月20日(日)第15回国際芥川龍之介学会(ISAS)オンライン大会で口頭発表した。
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Research Products
(4 results)