2020 Fiscal Year Research-status Report
江戸時代前期の絵草紙屋「小泉」における絵本・絵巻制作
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19K13051
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
末松 美咲 名古屋大学, 人文学研究科, 博士研究員 (10838402)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 奈良絵本・絵巻 / 絵草紙屋 / お伽草子(室町物語) / 日本文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、絵草紙屋小泉の絵本・絵巻についての基礎的な研究を行った上で、近世前期の絵草紙屋における絵物語制作の方法について考察し、その活動を文学史の中に位置付けることにある。そのために、①「小泉作品の基礎的研究・資料集の作成」②「江戸時代前期の絵草紙屋における絵物語制作の方法の究明・文学史への位置付け」という2点を軸に研究を行っている。 昨年度は、小泉印を持ち、絵草紙屋小泉で制作されたことが明らかな絵本・絵巻を中心に調査を行ったが、本年度は、これらの絵巻・絵本に類似した作品の調査、資料データの収集もあわせて行い、小泉およびその周辺の絵草紙屋で制作された絵巻・絵本を総合的に捉えるための基礎的作業を進めた。具体的には、安城市歴史博物館蔵『七夕絵巻』、名古屋市博物館蔵『鶏鼠物語絵巻貼付屏風』などの実見調査・写真撮影を行った。昨年度からの調査作品の注釈研究は順次行っており、上記①「小泉作品の基礎的研究・資料集の作成」に向けての準備を進めているところである。また②「江戸時代前期の絵草紙屋における絵物語制作の方法の究明・文学史への位置付け」として、小泉印を持つものを中心とした奈良絵本作品の分析、および江戸時代前期における奈良絵本の制作についての研究を進めた。まず、江戸時代に多くの奈良絵本が制作された『しぐれ』物語について、蓬左文庫蔵奈良絵本を中心に物語本文の展開を考察した。これについては、名古屋大学人文学研究科の紀要『人文学フォーラム』にて研究成果を公開した。またこの研究を発展させ、ハイデルベルク大学主催のシンポジウムにて『しぐれ』の奈良絵本および版本の展開について総合的に論じた。さらに、昨年度進めていた奈良絵本『硯わり』の成立と絵草紙屋との関係についての研究内容を論文にまとめた。この論文は、2021年8月発行の学術雑誌に掲載される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の計画としては、本年度は国外に所蔵される奈良絵本・絵巻の調査を進める予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって海外調査を行うことができず、進捗は当初の予定からやや遅れている状況である。また国内移動もままならない状況であったため、県内の機関に所蔵される資料を中心に調査を行ったが、全体として実見調査できた数は少なく、資料の収集は不十分であった。ただし、本年度調査した絵巻、屏風は、当初の計画にはなかった小泉作品、および周辺作品として新たに追加されたものであり、本研究を進める上で重要な資料としてデータを得ることができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いたところで、国外所蔵の絵本・絵巻の調査を迅速に進める必要がある。それまでは、可能な限り国内所蔵作品の調査を行う。またこれまでに資料データを入手した個別作品の翻刻、分析を進め、順次その成果を公開していく。
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Causes of Carryover |
上述したように、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、資料の収集け研究成果の公開を十分に行うことができなかった。次年度以降は、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いたところで、国内外の調査や学会発表を行い、研究課題の推進に努める。それまでは、これまで入手した資料の分析研究に注力する。
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Research Products
(2 results)