2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K13052
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
猪瀬 千尋 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (10723653)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中世文学 / 芸能史 / 儀礼学 / 雅楽 / 唱導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は①音楽儀礼の資料からの分析、②音楽儀礼に関わるイメージの分析、③唱導資料の読解を中心に行った。 ①について音楽儀礼を記す諸文献(漢文日記、次第等)の読解を行った。特に琵琶における秘曲伝授とよばれる儀礼(琵琶灌頂)について、その発生と展開を考察した。得られた成果については論集(英語)として刊行した。 ②について、音楽神とされる弁才天についての体系的分析を行った。具体的には図像の収集や、儀軌類の分類等である。その過程で弁才天に密接に関わる尊格であるダキニ天について新知見を得た。また弁才天に関わる言説が中世太子伝にも及ぶことがわかった。その成果の一部について、論集上で報告を行った。 ③について、安居院流・澄憲(1126-1203)と東大寺別当・弁暁(1139-1202)の唱導を中心に分析した。澄憲については先年度に引き続いて『法華経釈』の分析を行った。諸本収集、校異、注釈といった基礎的作業を行い、得られた成果について中野顕正氏とともに『金沢大学国語国文』上で報告を行った。『尊勝院弁暁説草(弁暁草)』には、多数の儀礼や尊格についての情報が収録されている。ここでは説草の注釈・読解を通し、それぞれの唱導がいかなる儀礼の際のものであるかを確定し、儀礼における思想性を解明することを目指した。その過程で八条女院(1137-1211)が一筆による大般若経・五部大乗経を行っており、その目的が崇徳院の慰謝であった可能性があることがわかった。また大勧進・重源(1121-1206)における儀礼構想についても新たな知見を得る事ができた。前者については論集上で報告を行い。後者については中世宗教史研究会で報告を行った。また弁暁、澄憲の両者の唱導分析の成果を統合し、後白河院の逆修儀礼と唱導の関係について文学の観点から分析を行い、仏教文学会上のシンポジウムで発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度より続くコロナウイルス感染拡大により、本研究の一つの目的としている儀礼の再現上演は困難な状況にある、また文献調査も遅れている。しかしながら、儀礼に関わるテクストの読解を通し、多くの事実を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
如上の儀礼の再現上演は、図像やパソコン上での作成を目指すことで代替とする。次年度は最終年度の予定のため、文献調査は秋までに目処をつけ、実施できない場合は、より精緻な文献読解を目指す。
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Causes of Carryover |
予定していた国際学会が来年度に延期となったため、その分の費用を繰り越した。本年度の国際学会費用に充てる予定であるが、もし延期・中止となった場合は、発表予定であったテーマのための資料作成・文献調査費用に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)