2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K13052
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
猪瀬 千尋 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (10723653)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中世文学 / 雅楽 / 儀礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は①地下楽人についての分析、②音楽儀礼に関わる芸態の分析、③音楽儀礼に関わる文学的研究を中心に行った。 ①について、音楽儀礼の構成員である地下楽人についての分析を行った。特に中世期における四天王寺の楽人・秦氏について資料を徹底的に調査し、1. 随身を職掌とした秦氏とは別系統であり、調べた限り全員が無位無官である。系図や生没年も未詳。 2. 活動域は葛城山系以西と法隆寺周辺が中心である( 太子信仰や律宗の動きとも重なる)。基本的には南都北嶺には祗候しない。3. 十四世紀までには岡家、小義家、薗家が存在していた(近世の秦姓は岡、林、東儀、薗の四家からなる)。という三つの特質があることを明らかにした。 ②上記①で注目した四天王寺楽人について、芸態の分析を行った。特に、四天王寺舞人によって相承された採桑老の舞に注目した。その結果、採桑老が多分に老態を誇張するものであること、中世には係物と呼ばれる採桑老独自の所作が行われ、それが四天王寺において秘伝として相承されていたことをつきとめた。 ③これら①②で分析したことを合わせ、『古事談』『続古事談』『古今著聞集』などの中世説話集に描かれる、四天王寺舞楽の様相について読解を行った。『古今著聞集』が四天王寺楽人の内裏参仕や、そこでの特異な芸態を、是としていることなどを明らかにした。その内容について2022年度中世文学会秋季大会にて発表を行い、『中世文学』誌上に論文を掲載した(刊行は2023年度であるが最終年度の時点で入校済である)。
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Research Products
(4 results)