2021 Fiscal Year Research-status Report
江戸幕府歌学方北村家および初代北村季吟に関する基礎的研究
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19K13060
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
宮川 真弥 天理大学, 図書館, 司書研究員 (90802398)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 北村季吟 / 歌学方 / 北村家 / 和学 / 誹諧 / 書誌学 / 伝記 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度もCOVID-19は終息をみることなく、未調査資料の原本調査は困難である状況が継続した。そのため、全国の史資料を博捜することにより、季吟以降の北村家の伝記的事実を明らかにする本研究課題の主目的は転換を余儀なくされた。そこで昨年度に引き続き、既収集資料・調書の分類整理と分析を中心に据え、併せて天理図書館所蔵資料の精査を行い、本研究課題に関連した今年度の研究実績として、論文2本、翻刻1本を発表した。 一つには、季吟の2種の花押が据えられる書翰等の内容分析による年時の確定・推定や、各種資料の真贋の検討などを踏まえ、花押の更改時期を寛文8-9年の間と特定し、更改の要因について考察した。また、並行して行った収集資料の分析により、従来推測に過ぎなかった板本『女郎花物語』の編者が季吟であることをほぼ確定させた。 一つには、臼井本『徒然草拾穂抄』の調査分析により、該書が『徒然草文段抄』のごく初期の草稿としての性格を有することを指摘し、季吟の『徒然草』注釈の形成過程、ならびに松永貞徳の『徒然草』注釈の実態を検討する恰好の対象であることを明らかにした。また、該書の書写者である臼井定清と季吟の交流を諸資料によって裏付け、該書の資料的価値の妥当性を担保した。 また、石水博物館蔵『詩歌 法眼季吟七十賀』の影印・翻刻を行った。該書は元禄六年の季吟七十賀に際して各地から集めた詩歌を集成した孤本であり、季吟晩年の交友範囲が知られて貴重である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19は終息をみることなく、未調査資料の原本調査を延期せざるを得なかったが、計画を組み替え、かねて用意していた代替作業ならびに研究を実施することによって、本研究課題の進展に大きな遅延を生じることはなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度以来、COVID-19の感染拡大の影響により、原本調査の予定が見通せない状況である。感染状況が落ち着いた時期を見計らっていくつかの原本調査を行う計画であるが、次年度が最終年度となるため、本研究課題の所期の予定の遂行は困難である。従って、既収集資料・調書の分類整理と精査・分析を中心に据え、各資料の研究と本研究課題の総括を行う予定である。 また、今後も今年度と同様、北村季吟およびそれ以降の北村家各人の事績を明らかにすべく、各種関連資料の博捜・収集・分析・研究を行い、「書簡」「和歌」「誹諧」資料などを中心に、資料集成ならびに分析を継続する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大の影響により、研究代表者の原本調査が行えず、次年度に調査時期を繰り延べたためである。ただし、次年度も確実な終息は見通せず、旅費支出を中心としていた予算を一定程度再構築する必要がある。 使用計画としては、元来の計画で旅費に充てていた額を、貴重資料の撮影複写費や研究会開催準備費に転換することで、研究計画の円滑な転換をはかることとする。
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Remarks |
宮川 真弥, 岡本 聡「『詩歌法眼季吟七十賀』影印・翻刻」『「石水博物館館蔵資料を中心とした伊勢商人の文化サロンに関する総合的研究」成果報告書』(2022年、pp.12-32)
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Research Products
(2 results)