2020 Fiscal Year Research-status Report
The Relationship between Folklore,Mythology and Japanese Modern Literature in the 1980s:A Study on Magazine"tan"
Project/Area Number |
19K13065
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
須賀 真以子 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (00769987)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 潭 / 1980年代 / 渋沢孝輔 / 中上健次 / 古井由吉 / 入沢康夫 / 粟津則雄 / 日本文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は4つの課題を設定するが、課題①文芸誌「潭」の基礎調査は前年度に調査済である。今年度は①の成果を元に、②80年代の民俗学・神話学的成果の整理③「潭」掲載作品の分析④80年代文学の流れの中に「潭」を位置付けることを遂行する予定であった。しかし、今年度は新型コロナウイルス感染症の影響で研究遂行に困難をきたした。とくに②は図書館の利用が制限され遂行が難しくなったことから、今年度は③を優先させた。 ③について、「潭」同人の詩人、渋沢孝輔を対象に選び、詩集『緩慢な時』(1986)について、渋沢の80年代における詩作行為の試みを抽出した。結果、同詩集の仏教詩としての世界観の中に、本研究で着目する民俗学や神話学、哲学などの痕跡や世界観の共有が認められた。また、同詩集にしばしば挟まれる当時の世相への批判は、本格的な大衆社会の到来にあたり「潭」が抱いていた「文学」への危機意識とも通じるものがあると結論付けた。成果を研究会にて発表し、現在学会誌に論文を投稿中である。 ②について、制限付きではあるが資料収集を再開し、『書評年報』を用いて、1970年から1990年まで、書評で多く取り上げられた民俗学・神話学および文化人類学に関連する書籍や著者を抽出した。前年度に行っていた「へるめす」などの雑誌の調査と合わせ、とくに取り上げられることが多い文化思想の発信者をある程度しぼり込めたので、今後は③の分析に生かすとともに、成果を整理し、報告することを予定している。 ②③を遂行していく過程で、④について、文学の流れというよりも思想潮流との関係について、幾つか知見を得た。たとえば「日本人論」や「古代」の流行は、海外文学への眼差しや、海外文学からの学びとも関連性があるのではないか。「潭」の抱く「文学」への危機意識が、当時の知の潮流とどのようにかかわっていたのか、今後も調査を続ける予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は転職による環境の変化に加え、新型コロナウイルス感染症の影響により、1年を通じて研究活動が大幅に制限された。 とくに、コロナ禍による転職後手続きの遅れも手伝い、科研費が使用できるようになった時期自体が遅く、さらに、執行には所属先に出校する必要があったが、通勤の制限、および小学校が休校になったことによる育児負担の増加の関係で、年度末に至るまで科研費の使用に大きな制約がかかった。また、大学の授業形態がオンデマンド形式になったことにより授業資料作成等に時間を取られ、調査研究のための時間を十分確保できなかった。 一番大きな要因として、文献調査のための出張に大きな制限がかかり、各種資料(とりわけ民俗学・神話学関係の資料)入手と調査が困難であったことが挙げられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は十分な調査研究が出来なかったため、研究期間延長申請を行い、本年度も研究を継続することとした。本年度の研究の推進方策は以下のとおりである。 課題②80年代の民俗学・神話学的成果の整理については、引き続き資料の調査を行う。抽出した研究者・著作を整理し、当時の作家たちとの影響関係を考察する予定である。 課題③「潭」掲載作品の分析について、渋沢の調査から浮かび上がってきた当時の現代詩の流れを考察するとともに、古井由吉の作品を分析対象とする予定である。 以上の②③の課題を遂行し、④80年代文学、および知の潮流の中に「潭」を位置付けることを以て、本研究の結論としたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により研究活動が大幅に制限され、さらに転職による環境の変化に伴い、書籍の購入等を十分に行えなかった。 旅費に関しては、上記の制限のほか、予定されていた学会が中止またはオンライン開催となったため、学会出張として計上していた分を使用しなかった。「その他」は複写費が多くの割合を占めるが、上記の理由で調査出張に出かけることが難しく、同様に支出がほとんどなかった。 今年度は、昨年度購入できなかった書籍の購入を中心として使用する予定である。旅費・その他の出費に関しては、状況に鑑み、調査出張が変わらず困難である場合は、書籍代の一部として支出する予定である。
|
Research Products
(1 results)