2022 Fiscal Year Research-status Report
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19K13070
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
高橋 麻織 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (80588781)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生育儀礼 / 歴史資料 / 産養 / 皇位継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、依頼論文の執筆を進めた。「『栄花物語』元方の怨霊と創造された〈歴史〉―立太子争いの敗者の系譜―」(吉海直人編『平安朝の物語と和歌』新典社、2023年7月刊行予定)と「生育儀礼から読み直す「竹河」巻」(河添房江編『源氏物語を読むための25章』武蔵野書院、2023年10月刊行予定)は、既に原稿を提出済みで、2023年度刊行予定である。 また、11月からは、コロナの収束にともない対面開催となった研究会や学会に出席することができた。古代文学研究会は、11月例会(名古屋)、12月例会(京都)、1月例会(京都)、3月例会(京都)全てに出席できた。また3月例会では、合評会の報告をした。渡橋恭子「『弄花抄』と『細流抄』の編纂方針の検討―『河海抄』の利用状況に着目して―」(『古代文学研究第二次』第32号、2022年10月)合評会報告(2023年3月)である。 現在、調査しているのが、『源氏物語』明石姫君誕生時に描かれる「御佩刀の儀」について、『河海抄』が禎子内親王の事例を挙げていることである。禎子内親王は長和年間の誕生で、『源氏物語』成立期よりも後世の史実なのである。先行研究では、「歴史の先取り」だとか『源氏物語』が歴史を動かした例などと指摘される。しかし、それらを論証する資料はない。この現象をシンプルに理解し、あくまでも『河海抄』の注釈態度として把握すること以外、難しいのではないかと思う。よって、『河海抄』に掲載される『栄花物語』『大鏡』の引用本文を悉皆調査している最中である。『源氏物語』成立期以降の史実をまとめ、禎子内親王の事例とあわせて考察対象とする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
4年間の進捗状況を振り返ってみると、調査や研究報告で若干の遅れが見られる。昨年度まではコロナの影響で、研究発表する機会が減っていたことと、一昨年度から体調が悪化したことも影響している。ただ、昨年度の秋頃からは回復傾向にあるので、科研の期間を1年間延長して、現在は意欲的に研究活動を進めている。 生育儀礼が物語にどのように描かれるかという観点から、『栄花物語』の広平親王と『源氏物語』「竹河」巻の冷泉院皇子に焦点を当てて読解した。これらは、前年度までの「御佩刀の儀」と「産養」の調査を反映させた研究報告である。いずれも、誕生時の生育儀礼がどう描かれるかが、その皇子の皇位継承の可能性と関わることを結論としている。このような『栄花物語』の歴史認識は、『源氏物語』によって形成されたものであることも重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに調査してきた「産養」「御佩刀の儀」「五十日・百日の祝」の悉皆調査を踏まえ、それらを物語読解に還元する研究を進めていきたい。現在、考えているのは、『源氏物語』明石姫君の「御佩刀の儀」である。昨年度、『うつほ物語』から『源氏物語』への影響という形で「御佩刀の儀」が描かれた可能性について論じた(「『源氏物語』明石姫君誕生時における「御佩刀の儀」―『うつほ物語』いぬ宮の事例を踏まえて―」(『日本文学研究ジャーナル』第17号特集企画 「源氏物語を読む」(高木和子・鈴木宏子編、2021年3月)。 次は、その『源氏物語』明石姫君の「御佩刀の儀」が描かれることを『栄花物語』や『河海抄』がどう記しているかという点である。『栄花物語』には、長和年間の禎子内親王誕生時の賜剣こそ、女児誕生時の「御佩刀の儀」であると繰り返し書かれる。であれば、『うつほ物語』や『源氏物語』が女児誕生時の「御佩刀の儀」を描くことは、歴史を先取りした物語の虚構なのであろうか。実態を探ることは難しいので、そのことが『栄花物語』に言及されること、また『河海抄』が『源氏物語』の准拠として禎子内親王の事例(『源氏物語』成立期以降の史実)を挙げることについて考えたい。それにより、『河海抄』の准拠説成立に、歴史物語が関わってくることを提示できると思う。
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Causes of Carryover |
2021年度~2022年度にかけて体調不良が続き、研究が予定通り進まない期間があった。2022年6月~7月入院・手術を経て、ようやく回復してきている。また、コロナの収束にともない、研究会や学会が対面開催に切り替わっているので、研究発表なども含め研究活動を以前のように精力的に進めることができるようになっている。2023年度は2本論文を刊行予定であり(脱稿済み)、2023年10月中古文学会で研究発表予定である。
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Research Products
(1 results)