2022 Fiscal Year Annual Research Report
近世日本「白話文化」の研究―唐話学・白話文学受容の文学史的位置づけ―
Project/Area Number |
19K13078
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
丸井 貴史 専修大学, 文学部, 准教授 (20816061)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 初期読本 / 浮世草子 / 吉文字屋 / 大雅舎其鳳 / 都賀庭鐘 / 白話小説 / 岡島冠山 / 上田秋成 |
Outline of Annual Research Achievements |
まずは今年度の研究成果について記述する。 2022年8月27日、神戸大学文学部国語国文学会シンポジウム「近世俗文芸の作者の〝姿勢(ポーズ)〟―序文を手掛かりとして」において口頭発表「『太平記演義』序文の発憤説―公憤から私憤へ―」をおこなった。『太平記演義』は岡島冠山の手になる作品で、白話小説や通俗物の影響を受けて成立した点において注目されるとともに、初期読本に影響を受けた可能性も考えられている。本発表では本作序文のあり方が演義小説や通俗物と異なることの意味について検討したうえで、その文学史的意味について考察した。 2023年2月25日、小説史研究会において口頭発表「『時勢花の枝折』の性格―往来物・類題集・艶書小説―」をおこなった。『時勢花の枝折』は、初めて白話小説が利用された吉文字屋本浮世草子である点が注目されているが、往来物・類題集・艶書小説といった従来の日本文学の要素をも多く取り入れている点もまた興味深い。本発表では、本作における日本文学と中国文学の融合のあり方と、和歌の出典注記に関する問題について検討した。 その他、堀新・井上泰至編『家康徹底解読 ここまでわかった本当の姿』(文学通信)に論文「人質時代の家康(虚像編)」を発表し、2022年6月25日中日新聞夕刊「ほんの裏ばなし」のコーナーに、拙編『読まなければなにもはじまらない いまから古典を〈読む〉ために』(文学通信)に関するコラムを執筆した。 本課題の研究期間中は、特に浮世草子と初期読本における白話小説受容の共通点と相違点の検討を中心的におこなった。特に、吉文字屋から刊行された白話物浮世草子の文学史的位置づけについての成果を発表できたのは、意義のあることであったと思う。
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Research Products
(4 results)