2020 Fiscal Year Research-status Report
筆者伝承にみる室町戦国期の女性の文芸活動 一位局を中心に
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19K13081
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyota College |
Principal Investigator |
江口 啓子 豊田工業高等専門学校, 一般学科, 講師 (00824476)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 一位局 / 女性筆者 / 近衛政家 / 古筆伝承 / 古筆鑑定 / 小敦盛 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度に引き続き、一位局の筆者伝承を持つ作品の調査を行った。しかしながらコロナ禍のため思うように調査に行けず、調査予定の作品の半数がまだ調査できていない状態である。2020年度に一位局の筆者伝承を持つ作品で調査を行ったのは日本民藝館の『雀の発心』のみであった。また、地元の安城歴史博物館で『七夕』絵巻の調査を行った。 すでに調査を行った早稲田大学図書館蔵『小敦盛』については翻刻をし、諸本比較を行った。その結果、諸本では物語の結末を小敦盛が西山の善恵上人という高僧になったことを述べるが、早稲田本のみそのことには触れず、小敦盛の母の往生を説いていることがわかった。後の渋川版では早稲田本同様に小敦盛の母の往生が結末部で語られているため、早稲田本は写本の『小敦盛』と渋川版『小敦盛』の結節点となる作品といえる。また、女性の往生を説くが故に一位局の筆者伝承がついたのか、一位局ないし女性筆者が手がけた故に女性の往生が結末となったのかについて精査していく必要がある。この研究成果については2021年度中に発表および論文化を目指している。 なお、2020年10月にダートマス大学シュミット堀佐知氏主催のオンラインワークショップ「Thinking <Women X Women> in Japan」において「女たちの寝室」という題で発表を行った。ここでの発表についても英語あるいは日本語での論文化を予定している。 近衛政家の日記『後法興院記』はデータ化し、キーワード検索を行えるようにして分析を進めている最中である。室町後期、戦国期における文芸サロンとしての近衛家についても研究を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度に引き続き、コロナ禍のため調査先が受け入れできない状態であったり、こちらが緊急事態宣言などで出張できない状態であったりして、予定していた作品の調査を行えていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、すでに調査が完了をしている作品を中心に分析を進めていくつもりである。そのためには諸本比較をするために関連の作品の調査も必要となるのであるが、可能な限りデジタルアーカイブを活用し、実地調査ができなくとも研究を進められるように工夫をしていく。また、実物を見ることはできなくても、すでに翻刻されている作品であればテキスト分析だけはできるので、関連の書籍、論文等を収集し、研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため資料調査に行けず、旅費が大幅に余ることとなった。その分、資料の影印や翻刻の載っている書籍の購入に予算をあてた。今後も書籍の購入や資料の写真使用料にあてていく予定である。
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Research Products
(1 results)