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2021 Fiscal Year Research-status Report

『玉水物語』にみる種と性の越境

Research Project

Project/Area Number 19K13083
Research InstitutionNational Institute of Japanese Literature

Principal Investigator

安岡 佳穂子 (井黒佳穂子)  国文学研究資料館, 古典籍共同研究事業センター, 特任助教 (90743104)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2023-03-31
Keywords御伽草子 / 異性装 / ジェンダー / 異類婚姻譚 / 長歌
Outline of Annual Research Achievements

昨年度は異類から人、男から女という変身の二重構造を通して描かれる、主人公の性自認と葛藤について、他の公家物に分類されている御伽草子や、中世王朝物語と比較しながら考察してきた。今年度は、物語の終盤にて詠われている長歌に着目した。先行する物語文学と同様に、御伽草子においても人物の心情を表現するものとして、数多くの短歌が詠まれているが、一方で長歌を詠んだ作品は限られており、今回は長歌を詠んだ御伽草子を網羅的に調査した上で、『玉水物語』における長歌について考察した。
柿本人麻呂によって完成された長歌は、短歌の隆盛に比して衰退の一途をたどるが、仮名文学の中でわずかに命脈を保っていた。「一時代前の歌体」とされる長歌は、特別な教養が必要であり、あらたまった際の表現であった。
『玉水物語』では、傍にいられずとも、姫君の幸せを願い、行く末まで見守ろうという「請願」として長歌が使われており、上位者への奏上を目的とする、長歌本来の役割に近いものであった。これは狐でありながら高い教養を持つ玉水が、姫君に対して威儀を正すことで、姫君の将来を予祝する狙いがあったと考えられる。長歌を通して玉水の恋は愛へと昇華され、異色の純愛物語として生まれ変わったのである。
『玉水物語』にて描かれた変身を丁寧に紐解くことで、性と種族の越境を描いた本作は、時代を超えて現代の創作にも通じる要素を内包することが明らかになった。しばしば類型的、先行文学の模倣作と見なされがちな御伽草子において、こうした型と型の余白に生まれる新しさは、文学本来の豊かさを体現したものといえよう。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度は昨年度まで続けてきた『玉水物語』に関する研究成果をとりまとめ、「公家物として見る『玉水物語』」と題して、「国文学研究資料館紀要 文学研究篇 第四十八号」に掲載した。本研究はいわゆるコロナ禍以前に企図したものであったため、緊急事態宣言やまん延防止などの措置により、各種資料を所蔵する大学や図書館、博物館などの休館や開館時間の短縮などが相次いだことで調査の遅延を余儀なくされた。
実際に資料を手に取る資料調査が進まないため、大きな方向転換もやむない状況下であったが、博物館や大学図書館が公開する貴重書画像データベースなど、デジタル資料を積極的に活用することで、こうした状況下でも研究が継続できたことに安堵している。
現在も学会や研究会を対面で開催することは未だ困難であり、引き続き当面の間はオンラインによる実施を念頭にした活動にならざるを得ないだろう。しかしながら、デジタル資料の閲覧サービスや、関連アプリケーションに対する対応が進み、昨年度よりもスムーズに研究を進めることができたため、概ね予定通りに計画を進めることができたと考える。

Strategy for Future Research Activity

新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言やまん延防止などが実施されているが、少しずつ対策が進み、開館時間や利用者の予約・制限などを行って開館する施設が増えつつある。一定の制限はあるものの、以前のような資料調査が行えるようになった事は福音である。しかしながら、現在も新たな変異株の出現など予断を許さない状況であり、政府、各機関の対応に従って行動し、研究計画については適宜見直しつつ、検討していかなければならない。当面の間、資料調査や研究は引き続きオンラインの活用を中心に継続していくしかないと考えている。

Causes of Carryover

昨年度と同様に新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、緊急事態宣言、まん延防止などの措置が各地で実施されており、さらにリバウンド警戒期間が設けられるなどしている。資料を所蔵する博物館や大学などの各施設利用は、制限付きで再開されたものの、県を大きく越境する調査は、まだ自粛せざる得ない状況が続いているため、未使用額が生じている。したがって、貴重資料の閲覧や研究会の参加にはオンラインを活用し、未使用額は資料複写や関連書籍の購入などに充てることで、不足を補いつつ、研究を進めていきたい。

  • Research Products

    (1 results)

All 2022

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] 公家物として見る『玉水物語』2022

    • Author(s)
      井黒 佳穂子
    • Journal Title

      国文学研究資料館紀要 文学研究篇 = The Bulletin of The National Institure of Japanese Literature

      Volume: 48 Pages: 79~104

    • DOI

      10.24619/00004445

URL: 

Published: 2022-12-28  

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